みかん小説
本棚

"雑炊を疑った息子とノロ陽性の判定" 第17話

健太の声が震えていました。

もなかったし、しトイレにっただけですぐ治ったんです。」

健太は必に弁解しました。

「だから、ただのえだとって。」

からたい息をむ音が聞こえました。

ノロウイルスの無症状、あるいは軽症染。

健康な、軽い痢程度で済んでしまうことがよくあります。

しかし、ウイルスを排していることには変わりありません。

「ご主は当院の族トイレを頻繁に使用されましたね。」

佐々医師の静かな問いかけに、健太はゆっくりと頷くしかありませんでした。

洗いは鹸で分にいましたか。」

医師は追求しました。

「アルコール消毒だけでなく、流でしっかりと洗い流しましたか。」

健太は何も答えることができませんでした。

彼ので、自分の適当な洗いと、そので触れたドアノブ、そして妻のベッドのすりが次々と繋がっていったのでしょう。

原因は私ではありませんでした。

ならぬ健太自だったのです。

自分が無識のうちにウイルスを持ち込み、妻を苦しませの患者まで巻き込んだ。

その事実がく、たく健太の肩にのしかかりました。

美咲さんは信じられないという顔で夫を見つめています。

「健太、あなたが。」

健太は美咲さんの目を見ることができません。

広告

ただを向いてブルブルと震えていました。

誰かのせいにしなければきていけなかった男が、自分自が最の加害者であるという現実に直面し、完全に崩れ落ちようとしていました。

しかし、私がこのカンファレンスルームで用していた真実はこれだけではありません。

私はハンドバッグのの通帳にそっと触れました。

息子のがりを正し、自分のを取り戻すための静かな反撃は、まだ終わっていなかったのです。

カンファレンスルームのい空気が、健太を押し潰そうとしていました。

彼が放った「俺」という呟きの余韻が、部にまとわりついています。

先ほどまで私に向けられていた族たちのたい線は、今や完全に健太へと向けられていました。

それはりというよりも、呆れと軽蔑が入り混じった底れぬたさでした。

佐々医師はさく咳払いをしました。

「もちろん、今の段階でご主染源だと断定することはできません。」

医師の言葉は健太を責めているわけではありませんでした。

あくまで医学な見からの静な事実の提示です。

「しかし、健康なであれば、ノロウイルスに染しても軽い腹痛や痢で済んでしまうケースは々あります。」

医師は続けました。

「その自覚がないまま、洗いが分な状態で共スペースに触れてしまうと、ウイルスは瞬くに広がってしまうのです。

広告

健太は両で顔を覆いました。

「嘘だろ。俺が美咲を。」

彼は子のさく丸まり、震えていました。

あれほどらかに母さんが犯だと叫んでいた彼の威勢は、見るもありません。

私はそんな息子の姿を最列から見つめながら、かないたい自分にしだけ驚いていました。

美咲さんは子ので顔を真っ青にしていました。

彼女の目は、隣で崩れ落ちている夫に向けられています。

彼女もまた、自分の犯した罪のさに気づき始めていました。

お義母さんの作りなんてだ。

彼女はで私を見し、根拠のない偏見で私を犯だと決めつけていました。

しかし実際の原因は、くにいた夫の無自覚な潔さだったのです。

「以で病院からの初期報告を終わります。」

が締めくくりました。

「皆様にはなるご迷惑をおかけし、くお詫び申しげます。」

げ、説会は苦しい空気のまま終しました。

族たちは無言でがり、次々と部ていきます。

誰も健太に声をかける者はいません。

すれ違い様にたい線を投げつけるだけです。

私はゆっくりとがり、膝ののハンドバッグを持ちました。

そして俯いたままかない健太と美咲さんの横を、無言で通り過ぎました。

彼らにかける言葉は、今の私にはありませんでした。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: