"余命1年の少年が託した、移植心臓の奇跡" 第13話
ふう、とい息をつきながら、レンが湯の縁に顎を乗せた。 湯気とい散るが、の頬を赤らめさせる。 「あったかいね……パパ」 その声は、震えてなどいない。芯まで温かい、確かな命の響きだった。 しれた所では、太が美都さんと緒に「が肩に乗ったよ!」とはしゃぎながら、パチャパチャとお湯を揺らしている。
私は湯のなかで、レンの肩をそっと抱き寄せた。 脈拍を確かめるように指先を添えると、力い、健やかな鼓が私ののひらに伝わってきた。 ――この温もりを守るために、私は医者になったんだ。 そう改めて胸の奥で刻み込む。
夕は、元の菜や温かい鍋料理が並ぶ個だった。 「んん、このマイタケのぷらサクサクする!」 太がの周りを揚げ物のだらにしながら声を弾ませる。 レンも、慎に箸をかしながら「美しい……」とさく笑った。 美都さんは、そんなの皿に取り分けをしながら、私と目がうと、照れ臭そうに、しかしこのなく穏やかに微笑んだ。
夜、布団を並べた。 のの音が、障子の向こうで静かにを刻んでいる。 「パパ……もだるま作れる?」 布団ので、太の眠たげな声が聞こえた。 「あぁ、きっと作れるさ。く寝なさい」 「うん……おやすみ……」 すぐに、太の寝息が聞こえ始めた。
隣を見ると、レンもすでに穏やかな寝息をてている。
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その寝顔を、美都さんが気スタンドののので優しく見つめていた。 私は、布団ので美都さんのを探し、そのえかけていない、温かい指先をそっと包み込んだ。 美都さんはびくりと微し、それからぎゅっと私のを握り返した。
「健太郎さん」 暗ので、い、甘い声が囁いた。 「ん?」 「私、今、本当に幸せです。みたいに」 「じゃないよ。現実だ。……おやすみ、美都」 「……おやすみ、健太郎さん」
窓のでがしらじらとり積もる音を聞きながら、私は目を閉じた。 傷だらけだった私たちの物語は、の静けさので、永に温かな族の章へと溶け込んでいった。
翌朝。 障子の向こうから、々としたいが部の隅々まで染み渡るように差し込んでいた。 私は静かに瞼をけ、隣を見た。 美都はまだ規則正しい寝息をてて眠っている。その眉のシワは完全に消え、子供のような無防備な寝顔だった。 ふと、布団の端がわずかに揺れる音に気づき、線を向けると、レンがすでに起きがって、障子の隙からの庭をじっと見つめていた。
私は音をてないようにゆっくりと半を起こし、い声で声をかけた。 「レン君。おはよう。いね」
レンはびくりと肩を震わせてから、私の方を向き、照れくさそうにはにかんだ。 「おはよう、パパ……。、すごいついてるよ」
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私は布団から抜けし、羽織を肩に羽織ってレンの隣に歩み寄った。 障子をしだけけると、キリリとえた澄んだ空気が、肺の奥まで気に流れ込んできた。 庭の灯籠の笠のには、ふっくらと数センチの子が乗っている。枝垂れ葉の細い枝も、いみで優しくたわんでいた。
「寒くないかい?」 「ううん、平気。……胸、全然苦しくないよ」
レンは自分の胸元にそっとを当て、確かめるようにトントンと軽く叩いた。 その仕に、私の胸の奥が温かな堵で満たされる。 「よし。じゃあ、顔を洗って、朝ごはんをべにこうか。子を起こさないと」
背で、もぞもぞと布団がいた。 「ん……パパぁ……おはよぉ……」 太が寝ぐせをボサボサにしたまま起きがり、両で目をこすりながらあくびをした。 「おはよ、太。がすごいぞ」 「ほんとに!? だるま作る!」 太は瞬で眠気を吹きばし、布団からびした。
朝は、広の窓際、化粧の庭を望む特等席だった。 湯豆腐の湯気がゆらゆらとちり、炭で炙られた鮎のばしい匂いが欲をそそる。 「いただきまーす!」 太の元気な声が広に響き、私たちは箸をとった。 温かいご飯に、汁の効いた噌汁。美都さんは満そうに含み、「おいしい……」とさく息を吐いた。 レンも、自分の茶碗の米をしっかりとべめている。
チェックアウトを済ませ、私たちは宿の玄関で記撮をした。 女将さんが持ってきてくれた古いレフのシャッターが切れる。