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"余命1年の少年が託した、移植心臓の奇跡" 第10話

「……やっぱり、悪い状態なんですね、うちの子は」 掠れた声の震えが、隠しきれずに空気を揺らす。 私は首を横に振ることはせず、ただ真っ直ぐに彼女の怯えた瞳を見据えた。 「悪化している、と言った方が正確だ。……筋の疲弊が予よりんでいる。このまま来通院を続けながらドナーの順位を待つだけでは、を越せるかどうか、正直に言って保証できないレベルだ」 その言葉が着弾した瞬、美都の顔から残っていた血の気が瞬にして引いていった。 「そんな……そんないや……! まだ、まだ8歳なのに……っ!」 美都は両で顔を覆い、絞りすような嗚咽を喉の奥に詰まらせる。 隣に座る蓮は、母親が泣きしたのを見て、自分のことのように表を凍りつかせ、さなで美都のワンピースの裾をそっと引っ張った。 「ママ……泣かないで。僕、丈夫だよ。痛くないもん」 「蓮……っ、蓮っ……!」 美都は堪え切れず、息子を胸のく引き寄せた。さな肩が激しく波打ち、部の空気が苦しい絶望のに染まっていく。 私はその景を直しながら、ポケットので自分のをぎゅっと握り締めた。 (ここで絶望させては終わる。……いや、絶望の淵のそのを、私が掘り起こしてを掛けさせるんだ)

私は席をち、歩だけ歩み寄って、く穏やかなトーンで言葉を継いだ。 「美都さん。

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泣いていても臓の収縮率は戻らない。だが、諦める必もまったくない」 美都が顔をげ、涙に濡れた赤い目を私に向けた。 「……どういうことですか?」 「選択肢はつある。つは、この病院を基幹施設として、補助 ventricular assist device(VAD)の装着を期に検討すること。もうつは、児循環器の専チームと連携し、院内のソーシャルワーカーを交えて活保障と医療費の完全免除・付スキームを今この瞬からフル稼働させることだ」 私は自分の名刺の裏側に、ペンで太く文字をき込んだ。 「これは、院内ソーシャルワーカーの田直美の直通内線だ。彼女は、政の裏の裏までり尽くしている。君がで背負っている『つの仕事と医療費の圧』を、半分……いや、割まで政の制度に肩代わりさせる」 美都は、差しされた名刺の文字を、濡れた瞳でぼんやりと見つめた。 「……私みたいな、夫に捨てられて、貯もろくにないが、そんない支援を……受けていいものなんですか」 「受ける権利がある。君が納めてきた税と、この国が子供の命を守るために用したセーフティ1 netだ。慮する必は1ミリもない」 私の声には、迷いのない質な響きを乗せた。 美都の唇がわずかに震え、やがて、その震える指先が私の名刺の端をそっと摘み取った。 「……先。私、どうすればいいですか。

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何をすれば、この子を救えるのなら……何でもします」 「最初の仕事は、今から夜勤のコンビニを辞めることだ」 私の言葉に、美都はハッとして目を見いた。 「えっ……? でも、おが……」 「おの計算は私が、私と田がやる。君がで免疫を落とし、万が倒れたら、蓮君は誰が支える? 母親の健康が、この子の最のライフラインなんだよ」 美都は言葉を失い、やがて、ぽろぽろと零れ落ちる涙を拭おうともせず、こくりときく度うなずいた。

その背で、蓮君がさな声で言った。 「……パパみたいに、いんだね、先」 私はハッとして、ベッドからりようとしていた蓮君の顔を見た。 は、真っ直ぐな目で私を見つめていた。 「僕は、もうすぐ使になるから、ママを困らせるだけだとってたけど……先に会うと、もうしだけきてみたくなっちゃうな」 その無垢な言葉に、胸の奥の最も柔らかい所がく疼いた。 私はしゃがみ込み、蓮君の目のさまで線をわせる。 「使になんてならなくていい。で、太と緒にサッカーのパス回しをするんだ。約束だろ?」 蓮君は、しだけ照れくそうに、しかし確かに、その青い唇の端を持ちげて笑った。 「……うん。約束する」 そのさなのひらが、私の差しした指先を、そっと握り返してきた。 体温はかったが、確かな命の力が、その細い骨の隙から伝わってきていた。

 

移植術から半が経過した。 病院の来は、季節れのたいのせいで、いつもより静かだった。

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