"余命1年の少年が託した、移植心臓の奇跡" 第2話
桜を失ってからというもの、失うことの恐怖が先にち、再び誰かをすることが怖くなっていたのだ。
それでも、太と笑いうは、俺にとって掛け替えのない、きる希望そのものだった。 過の記憶から識を現に戻す。あの、休の午、俺たちは差しがよい所の公園にかけていたのだった。
公園には桜のがち並び、静かなが葉を揺らしている。池のほとりには製のベンチが並んでおり、のどかな景が広がっていた。俺がベンチに腰をろそうとした、太が池の方を指差して声をげた。
「パパ、あの池にカモがいるよ! 見て見て!」
俺は太の指差す方向へ線を向け、微笑みながら頷いた。
「本当だな。くで見てみるか?」
「うん!」
太は嬉しそうに声をげ、池のほとりへと元気よく駆けていく。俺もちがり、そのをゆっくりと追いながら、息子の無邪気な笑顔を見てがじんわりと温かくなっていた。
だが、その瞬だった。 「うわあっ!」
苔むしたのでを滑らせた太が、バランスを崩し、そのまま池のへと落ちてしまったのだ。
「太!」
バシャァッというきな音を聞き、俺は血の気が引くのをじながら全速力で駆けした。だが、俺がいた所から池まではし距がある。太がをみ込み、もがいているのが見える。
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そのだった。
「危ない!」
公園にいた学くらいのが、迷うことなく浅瀬に駆け込み、しぶきをげながら必に太のを引っ張っていたのだ。
「しっかり! をさないで!」
は顔を真っ青にしながら、どう見ても体力のなさそうな細い体で、必に太を陸へ引きげようとしている。の息が荒くがり、額には玉のような汗が浮かんでいるのが目にも分かった。それでも、彼は決して太のをそうとはしなかった。
「今く!」
俺は池にび込み、を抱えげた。へとがり、息の詰まるような緊張ので太の無事を確認する。太はをんでむせ込み、泣きながらも無事だった。 そして、太を助けてくれたは、ぐったりと俺の腕ので倒れ込み、激しく息を切らしていた。
「君、丈夫か?」
俺がの青い顔を覗き込むと、は苦しそうな呼吸ので、々しく笑った。
「ぼ、僕……丈夫です」
だが、その顔の悪さ、異常なほど激しい息切れ、そしてチアノーゼを起こしてに変した唇。俺ので、医師としての直が鋭く警鐘を鳴らした。 (この子は、ただ疲れているだけじゃない。何か刻な病気を抱えている)
「ありがとう。息子を助けてくれて」 俺がくをげると、太も涙とを拭いながら、に向かってペコリとをげた。
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「ごめんなさい……。ありがとう、お兄ちゃん」
太の言葉を聞き、は「うん、うん」と優しく頷いた。
「よかった。にって……」
はそう言って、また々しく笑った。その笑顔が、齢の割に妙にびていて、そしてどこか儚く幼くじられた。
「僕、もうすぐ使になるんだ。だから、最にいいことできてよかった」
「え……使になる?」
俺はの言葉にを疑った。その言葉のを正しく理解するのに、しがかかった。「使になる」とは、をしているのか。こんなにさなが、どうして自分のを悟ったように、笑顔でそんなことを言うのだろうか。
その、くの遊歩から、焦燥しきった女性の声が聞こえてきた。
「蓮! 蓮!」
声の主は、20代半くらいの女性だった。彼女は息を激しく切らしながら、こちらへ向かって全速力で駆けてきた。女性はひどく疲労した顔をしており、作業着のような清掃会社の制を着ている。だが、そのダボっとした制のからでも分かるほど、彼女の体は細く痩せ細り、やつれていた。
「蓮! 丈夫!?」
女性は芝に座り込む――蓮のもとへ崩れ落ちるように膝をつき、そのさな体をきつく抱きしめて涙を流した。
「ママ、丈夫だよ。僕、この子を助けたんだ」
蓮君は母親の背に腕を回し、させるように言った。しかし、女性の表は険しいままだった。
「無茶しないでって言ったでしょ! あなたの体が持たないのよ……!」
女性は震える声で息子を叱りつつも、その背をさすり続けている。