"余命1年の少年が託した、移植心臓の奇跡" 第1話
面に激しい沫ががり、公園の静寂を切り裂くように切羽詰まった声が響いた。
「危ない!」
俺は弾かれたように顔をげ、声のした方向へ線を向けた。線の先では、息を荒く切らしながら、のがためらうことなく池にび込んでいた。しぶきので、は溺れかけてもがいている俺の息子・太のさなを必に引っ張っている。だが、太を助けようとしているの顔は、尋常ではないほど真っ青だった。
「今く!」
俺は声を張りげ、全速力で駆けした。元の芝を蹴りばすようにり、池の縁に辿り着くや否や、スーツのズボンが濡れることも構わずにのへび込んだ。の混じった底を力く蹴り、の元へたどり着くと、俺は両腕に力を込めて、もがく太と限界を迎えているを同に抱えげた。
ザバァッという音とともに陸にがり、を全なへそっとろす。は芝にへたり込み、肩を激しくさせて息を切らしていた。その唇のは青に変しており、らかに健康な状態ではない。俺は医師としての本能を働かせ、の顔を覗き込んだ。
「君、丈夫か?」
俺が配そうに声をかけると、は荒い息をえながら、々しく角をげて笑った。
「僕、丈夫です」
はそう答えた、空を見げるようにして、静かに、そしてしだけ誇らしげにこう言った。
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「僕、もうすぐ使になるんだ」
その純粋な笑顔の裏に、どれほど残酷でしい真実が隠されているのか。このの俺は、まだる由もなかった。の言葉がに溶けていくのを聞きながら、俺ののには、ある過の記憶が静かに蘇り始めていた。
俺の名は、健太郎。現35歳。 都会にある規模のきな総病院で、臓科医として働いている。いや、正確には「働いていた」というべきかもしれない。
かつて、俺はその病院に勤めて10、メスを握り続け、数え切れないほどのくの命を救ってきた。周囲からは「才臓科医」と呼ばれることもあり、キャリアは順満帆に見えただろう。だが、その華々しい称号の代償は、あまりにもきかった。
夜まで続く困難な術。休であろうと、急患がいれば容赦無く呼びされる々。病院のたい廊をり回る毎ので、何より俺のを締め付けていたのは、6歳になる息子の太とのが、ほとんど取れなくなっていたことだ。
あるの夕暮れ。保育園の迎えに幅に遅れてしまった、誰もいなくなった教でポツンと待っていた太が、俺の顔を見るなり寂しそうに聞いてきたことがあった。
「パパ、今も遅いの?」
俺は太のさな目線にわせてしゃがみ込み、そのを申し訳なさそうに撫でた。
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「ごめんな。でも、パパは今、どうしてもやらなきゃいけない事な術があって……」
言い訳がましい俺の言葉に、太はさく首を横に振り、無理に笑顔を作って見せた。
「うん。分かってる。パパは、の命を助けるすごいお医者さんだもんね」
そう言って健気に笑う太の顔を見るたび、俺の胸はギリギリと音をてて痛んだ。
俺には、妻がいない。太を産んだ、する妻の桜は、産の予期せぬ併症で命を落としたのだ。くのの命を救う医者でありながら、自分にとって番切な、最の妻の命を救えなかった。そのい悔と、取り返しのつかない罪悪は、何経っても俺のにく、鋭く刻まれたままだった。
桜の仏壇にをわせたある、俺はつの決をした。 (このままでは、太との掛け替えのない切なまで失ってしまう) そうい至った俺は、世コースであった都会の病院を辞め、自分のペースで働ける元の総病院への転職を決断したのだ。料は幅にがるが、そんなものはどうでもよかった。太と過ごすが、俺にとってはの何より事なものだったからだ。
そして現、俺たちは元に戻り、穏やかなしい活を始めている。 静かな常。息子と緒にご飯をべ、お呂に入る。
それでも、ふとになった、のどこかに埋めきれない空虚さが残っているのをじていた。