"夜勤明けに締め出された私――15分後の「さようなら」" 第8話
返した鍵、受け取った荷物
「ここ、病院にもやすいだろ」
拓也は喫茶のテーブルに賃貸物件の資料を広げた。最に2で話したいという申しを受け、昼のに会うことにしたのだった。
駅からのに赤い線が引かれ、取りの隅には彼の字で具の置き所がき込まれていた。
「親父とは話した。5かまでにることになった。初期費用がりなかったらて替えるけど、借用はけって」
彼は笑おうとして、すぐに資料へ目を戻した。
「でも2なら、賃も半分で済むしさ。母さんがいなければ、もう揉めないだろ」
私は取りを見た。台所から居が見えるさな部だった。7なら、ここに何のカーテンを掛けるか、考えただろう。今は、そこに自分のを運ぶ姿がい浮かばなかった。
「帰りに惣菜ばっかり買うのもいし、でべれば節約になる。おの作る飯なら、俺は何でもいいから」
「私が作るつもりで話しているの?」
拓也は顔をげた。
「そりゃ、俺が遅いは頼むことになるけど。おの夜勤のは、でべればいいだろ」
「私が勤のは、私が作るのね」
「そんな決めつけるなよ。できる方がやればいいんだって」
何を変えるか話しているはずなのに、彼は私がこれまでしてきたことを、そのまましい部へ運ぼうとしていた。
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私はカップにを添えた。拓也はそれを見て、慌てて鞄から封筒をした。
「これもある。の鍵。古い錠も残ってるって親父が言ってたから、戻せるんだよ。母さんとも距を置く。だから婚だけは考え直してくれ」
封筒から、見慣れた鍵がてきた。彼が使っていたものだった。私は鞄の内ポケットにある自分の鍵に触れた。使えなくなってからも、ずっとそこに入れたままだった。
「私は、あの朝だけっているんじゃありません」
拓也がをくに、私は続けた。
「7に配して、私を族ではないようにいて、帰ってきても入れないようにした。その、あなたは度も私に話しませんでした」
「だから、それは悪かったって」
「をてから、あなたが送った連絡を読み返しました。夕飯のこと、お母さんのこと、おのこと、夜勤をやめる話。私がどこで眠るのかを聞いたものは、ありませんでした」
拓也は資料を見つめた。赤い線を引いたのに、彼の指が止まっている。
「今から、ちゃんとするから」
「私は、戻りません」
そう答えると、ようやく彼が私の顔を見た。
「あの、ホテルにいたんだよな。ちゃんと眠れたのか」
私はし考えてから頷いた。
「眠れました。誰にも起こされずに」
その返事に、拓也は何も言わなかった。私は自分の古い鍵をし、彼の鍵の隣へ置いた。
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「荷物の受け取りは、向先から連絡します。今はそのためにへくこともしません」
をた、鞄がほんのし軽くなっていた。私はしばらく歩いてから、ポケットにを入れた。指先に触れたのは、今の部をける鍵だけだった。
その、義母から「荷物くらい自分で取りに来なさい」と伝言があった。私は必な品の覧を作り、向先に渡した。返してもらう物と、に残す物を分け、確認が必な物は勝に持ちさないようにした。
搬はにいるたちとを調し、修さんのち会いでわれた。義父は度へ戻っていたが、週末の帰宅にわせてくれた。私は話で箱のを確認し、写真でも照した。
部に届いた段ボールは6箱だった。
をし、護学の教科を棚へ入れ、母の写真を窓辺に置いた。青い箱には過6冊の帳があった。鞄から今の1冊をして並べると、7分が揃った。
背表のはしずつ違っていた。どのも、私は働いていた。そのにあので何をしたかを、誰かに認めてもらうためだけに読み返す必は、もうない。
器を包んだをいただけ、が止まった。青い湯みがあるはずはないと分かっていても、似たきさの包みを見ると確かめてしまった。てきたのは、結婚したに買ったい皿だった。
私はそれを洗って、自分の棚に収めた。取り戻せない物はある。それでも、ここへ届いた物を置く所は、自分で決められた。
箱を畳み終えた夜、向先から届いていた婚条件の確認事項をいた。1つずつ読み、必な返事をき込んだ。
最の送信ボタンに触れるに、もう度内容を確かめた。
《確認しました。この内容で、話をめてください》