"夜勤明けに締め出された私――15分後の「さようなら」" 第6話
入らなかった10万円
が替わった朝、私は自分の賃の支払いを確認した。9万6000円のが記録されている。そのには、義母への振り込みはなかった。
別居の活費は当面それぞれが負担し、義母への定額の送も続けない。向先を通じて拓也と確認し、義母にも事に伝えてあった。
分かっていても、毎繰り返してきた操作をしないと、何かを忘れている気がした。私は振込先の覧をきかけ、携帯をテーブルに置いた。
午に義母から話が来た。
「まだ入っていないんだけど」
「にお伝えした通りです」
「んでいなくても、族でしょう。今まで通りにしてもらわないと困るのよ」
台所で洗ったマグカップを伏せながら聞いた。この部には洗う器が自分の分しかない。夕べ使った鍋も、もう片づいていた。
「今は別の所で活しています。拓也さんとも確認しました」
「あの子が分かっているわけないでしょう。私がを回してきたのに」
義母はそこで初めて、で何におが必なのかを並べ始めた。費、用品、いつも私に頼んでいた買い物。聞いたことのある品ばかりだった。
私は計についての連絡は向先を通してほしいと伝え、話を切った。画面が暗くなっても、しばらくから力が抜けなかった。らせたに嫌を取り直すまでが、あのでの私の役目だったからだ。
広告
それでも、振り込みはしなかった。
夕方には拓也から連絡が来た。
《母さんに、今から俺が10万入れろって言われた。どうすればいいんだよ》
私は買い物帰りのでち止まった。袋にはさな豆腐と魚の切りが入っている。以は族の好みから順に選んでいたが、今は自分がべたいものだけを買っていた。
《お母さんと話しってください》
返信すると、すぐに話が鳴った。
「そういう返し方じゃなくてさ。飯は買ってこいって言われるし、洗濯も自分でやれって。にいても落ち着かないんだよ」
「必なことは、自分でして」
「おなら、うまく母さんと話せるだろ」
私は脇に寄って、買い物袋を持ち替えた。話して解決していたのではない。言われたことを私が引き受ければ、争いが終わっていただけだった。
「戻って料理をしたり、おを渡したりはしません」
拓也は、俺だけに押しつけるなよと言って話を切った。その言葉を聞いた、袋のさが妙にはっきりじられた。今まで私が持っていたものが、しずつ彼のに移っていた。
部に帰って魚を焼き、温かいうちにべた。、ノートに賃と費、通信費などをきした。自分の支を把握するためだった。余裕が無限にあるわけではないが、ここで暮らし続ける見通しはっていた。
広告
翌、に申し込んでいた過の取引細が届いた。必な期がかったので、数料と用できる範囲を確認して取り寄せたものだった。
封筒をいた、義父の姉の夜子さんから話があった。
「真由さん、し確かめたいことがあるの。悦子さんが、あなたは7ただでんでいて、ていった途端にのことを何もしなくなったって」
私は細の束を机に置いた。
「緒にいた頃も、自分の稼ぎは自分だけに使っていたって言うんだけど、本当?」
「違います。毎、活費を渡していました」
「やっぱりそうなのね。本に聞かずに、誰かへ伝えるのは嫌だったから」
夜子さんの声を聞きながら、私は最初の細をいた。振込先には、義母の名が印字されていた。
話を終え、同じ座への送を順に確かめた。結婚してからの記録が、机のに広がっていく。印をつけたを数えると、84件あった。
そのどれにも、10万円と記載されていた。