"夜勤明けに締め出された私――15分後の「さようなら」" 第4話
3万8000円の申込
「全部で3万8000円。それだけの話だよ」
拓也が類をテーブルに広げた。いちばんの領収を私の方へ向け、額の欄を指で押さえている。隣の義母は腕を組み、もう説は終わったという顔で子にもたれた。
「古い鍵だったんだから、いずれ替えることになったのよ」
私は領収のにある申込を見た。向先がを伸ばすに、拓也が自分で抜きした。
「これが申し込んだの。別に隠すようなものじゃないから」
申込は、私が締めされた朝の7だった。事はその。さんがを見た夕方と致していた。
私は指で付を追った。その、で何をしていたかが浮かんだ。仕事から帰って洗濯物を干した。煮物を作り、なくなった洗剤を買いした。拓也はその横で、交換する鍵が届くのを待っていたのだろうか。
「料理を断ったから、急に決めたんじゃなかったんですね」
「母さんはから困ってたんだよ。あのだけの話じゃない」
夫は付を隠さなかった。もって考えていたことが、自分たちの正しさを裏づけるとっているらしかった。
申込者の欄には、柏拓也とあった。で何度も見てきた字だった。私はそのの建物所者に関する欄で目を止めた。
「ここに、本所とあります」
義父が体をへ寄せた。
「拓也。
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これは、おがいたのか」
「そうだけど。実なんだから、同じだろ」
義父は鞄から登記事項証をした。申込の隣へ置かれたには、柏修という名がある。
「このは30にわしが建てた。おの名義にはしていない。事を頼んでいいとも言っていない」
拓也は子に座り直した。さっきまで領収を押さえていた指が、自分の膝へりた。
「所もってるし、母さんもいたんだからさ。そこまで言うことかよ」
「自分のだといた理由を聞いとる」
義母がを挟もうとしたが、義父はそちらへ顔を向けなかった。拓也も答えず、テーブルの縁を見ていた。
私は作業完の控えを確認した。交換した錠は2か所。同じ鍵でけられる組みわせで、受領数の欄に「5本」と記載され、その横にも拓也の署名があった。
「5本、受け取ったんですね」
「だから、1本は渡そうとしたじゃないか」
「私がをたです。事が終わったには、渡していませんよね」
「反省してから渡せばいいとったんだよ」
私は自分の膝のでをねた。鍵がりなかったのでも、うっかり渡し忘れたのでもない。渡さずに、私が玄関へ来るのを待っていた。
「申込のこちらも、確認させてください」
向先が、用の半分を示した。私はを寄せて、その欄を読んだ。
事を依頼した理由が、拓也の字でかれていた。
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《同居している女性が無断で入りするため》
読み終わってからも、目をせなかった。結婚して7、毎活費を振り込み、緒の部で寝起きしてきた。その相が、私をこう説していた。
拓也は私の顔を見て、居悪そうにをかした。
「業者に分かるようにいただけだって」
「この女性は、誰ですか」
彼は義母を見た。義母も夫を見ていたが、今度は助け舟をさなかった。
「私のことですね」
「そうだけど、いちいちの事まで説する必ないだろ」
私はゆっくり息を吐き、からをした。あの朝、帰ったら謝ろうかと、坂をりながら考えていた。謝り方を探していた自分が、今になってく見えた。
「私は仕事へって、帰ってきました。をるも、帰るも、勤務表にいてありました」
「それは分かってるよ」
「分かっていて、無断だといたんですね」
拓也はを閉じた。私は初めて、その沈黙を怖いとわなかった。こちらが先に折れなければ、答える番は向こうにある。
義父が私の方へ向き直った。
「あの鍵は、結婚したにわしが渡した。真由さんが無断で入りしたことにはならん」
私は頷いた。義父の言葉で、ようやく子の背に体を預けられた。
向先が、提示された類の写しを記録として残すことを確認した。拓也はく返事をし、義父の資料と並べられた申込から目をそらした。
「私の希望は変わりません。婚について、話をめてください」
私が言うと、拓也は急にを乗りした。
「待てよ。母さんが言うから俺が配しただけだろ。そんなのき方で、7を終わりにするのかよ」
「いたのも、配したのも、あなたです」
彼は私に何か言おうとして、指先で領収を引き寄せた。最初に示した3万8000円の数字を、自分の方へ向け直している。
「そもそも、夜勤をやめればよかったんだよ」
その言葉に、隣の義母が初めてきく頷いた。
「そうよ。そこさえ分かってくれれば、こんなことにならなかったのに」
私は2の顔を見た。鍵の話が終わっても、このたちはまだ、私の勤務表をき換えるつもりでいた。