みかん小説
本棚

"「帰ってこなくていい」と笑った家族――20年目の離婚届" 第15話

帰らなかった私の平

財産分与の話しいは、瀬弁護士を通じてまとまった。

浩司名義だった預貯、保険の解約返戻、社内積について資料が示され、婚姻に形成した部分をに記載した。分割は別の続きとして必類をそろえ、事務所へ提した。

私は浩司のすべてを奪おうとはしなかった。ただ、名義が浩司だからという理由だけで、私の20まで浩司のものにはさせなかった。

署名を終えた瀬弁護士が2冊のファイルを閉じた。

「これで法理は区切りです」

事務所をると、がスーツの袖を揺らした。婚届をした朝のような揚はなかった。代わりに、傾いていたが、ようやく平へ戻ったような静かながあった。

里奈とは、週に1度ほど話で話すようになった。

浩司と暮らすでは、洗濯とごみしを里奈が、買い物と夕を浩司が担当しているという。最初の1かは何度も論になったが、里奈はもう私へ「パパの嫌を直して」とは言わなかった。

「話しって決めたことだから、パパが嫌でも自分で言う」

その言葉を聞いた、私は娘が4の階段から、やっと自分のりてきたようにじた。

浩司の母からも1度だけ話があった。

「息子が忙しくて顔をさないの。

広告

みたいに連絡くらいできない?」

「浩司さんへ直接頼んでください。私はもう、そちらの親戚付きいを担当するではありません」

なら胸が痛み、断った理由を何度も説していただろう。今はそれだけ伝え、静かに話を切ることができた。

栄物産では、相川さんと畑さんが共の正式担当として契約更をまとめた。8億円の取引は会社に残ったが、成果報告の央に浩司の名はない。浩司は担当先を減らされたまま、3かごとの管理職評価を受けることになった。

相川さんと畑さんへ本げたと、父はさんから聞いた。それ以の処分を求めるはいなかった。失った信用を戻せるかどうかは、これから浩司自が毎の仕事で示すことだった。

正社員になって最初の、私の座へ24万円から税や社会保険料を差し引いた額が振り込まれた。そこから賃と管理費の7万7000円を分け、費と費を見積もっても、自分で使いを決められるおが残った。

帰り、私は駅ビルの靴へ入った。計簿に《自分の靴は来》といてから、同じ黒い靴を7く履いていた。員に勧められた8900円の革靴へを入れると、かかとが柔らかく包まれた。

なら、里奈の教材費や浩司のシャツを先にい浮かべ、棚へ戻していただろう。

広告

そのは値札を見たあと、自分の座残を確かめてレジへ運んだ。袋は驚くほど軽かったが、私には20分のさがあった。

11、実くと、父とさんが縁側で酒をんでいた。

「真由美さん、うちの若い社員にいい男がいるんだが」

さんが冗談めかして言うと、父まで「今度は見る目のある男にしろ」と乗ってきた。

「しばらく結婚はいい。今は1分の活を楽しんでるの」

私が答えると、母が台所から顔をした。

「あなたたち、娘のさないの」

父は湯みを持ったまま黙り、さんが声をげて笑った。私も母もつられて笑い、縁側には昔とは違う、誰もして作っていないるさが広がった。

そのの帰り、朝倉駅のスーパーで刺を1分だけ買った。

翌朝は弁当を2個作る必がない。530分に目覚ましを鳴らす必も、シャツの袖に残ったしわを確かめる必もない。へ着いたら、自分がべたいに炊きたてのご飯をよそえばいい。

813の朝、浩司は「ずっと帰ってこなくていい」と言い、里奈は「ママがいないほうがは平」と笑った。

私は2の言葉どおり、あのには帰らなかった。

けれど、族のために自分を消していた私は、20ぶりに自分のへ帰ってきた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: