"251840円の正月料理を持ち去った義母" 第19話
9ぶりに座って迎えた正
あいの温泉宿へ着く頃、細かながり始めていた。
磨かれたのには炉のが映り、ロビーには柚子のりが漂っている。仲居に名を呼ばれた由は、反射に荷物を持とうとしたが、「どうぞそのままで」と案内され、戸惑いながら私の隣を歩いた。
部の窓からは、くなり始めたと川が見えた。呂からがる湯気を眺めながら、由は畳へ座り、何度も計を見た。
「何か気になる?」
「このなら、いつも煮物のを見ながら、刺の皿を並べていたなとって」
夕は部ではなく、静かな個の事処だった。温かい椀物、量ずつ盛られた祝い肴、焼きたての魚。料理が運ばれるたび、由は「伝わなくていいんですよね」と冗談めかして笑ったが、最初のうちは箸を置くたびに入を気にしていた。
私は急がず、品ずつ緒にべた。料理を作った本がえた残り物を台所でへ運ぶのではなく、由のにも同じ温度の椀が置かれている。その当たりの景を取り戻すまでに、私たちは9もかかった。
事の途、父からいメッセージが届いた。
『こちらは配ない。久にも連絡しないよう伝えた。2でゆっくりしてきなさい』
続いて恵子伯母から、族それぞれが作った料理の写真が送られてきた。
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誰の卓も豪華さは違ったが、そこにいるたちが自分で用し、自分で片づける正だった。由は写真へ「皆さん、よいおを」とだけ返し、端末を伏せた。
「あの、カップ麺を箱買っておいてって言っただろう」
私が切りすと、由は笑ってうなずいた。
「驚いたよ。直さんまで投げやりになったのかとった」
「怖くなかった?」
「箱をける直は、逃げたかった。親戚全員に責められたら、また私が買いにれば済むって考えていたから。でも直さんが座卓のでを握ってくれた、初めて今回は戻らなくていいんだとえた」
由は、あのの触を確かめるように私のへ自分の指をねた。反撃の始まりは、カップ麺でも領収でもない。彼女が謝らずに、そのへ座り続けたことだったのだ。
「俺は君を守る、と言うつもりだった。でも今考えると、その言い方もし違った」
由がこちらを見る。
「君は、俺に守られるだけのじゃない。あの、証拠をすと決めたのも、9分のノートをいたのも、最に母さんへ言葉を返したのも由だ。これからは、俺が勝に守ったつもりになるんじゃなく、2で決めて、2の暮らしを守りたい」
由はしばらく黙り、目元を指で押さえた。泣いているのかとったが、顔をげたには穏やかに笑っていた。
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「じゃあ、来も2で決めよう。で過ごしてもいいし、また旅してもいい。誰かに命じられる正には戻らない」
夜、ので呂へ入り、部へ戻ると、計はしいへづいていた。母から話はなく、隆志からの相談もない。静けさので聞こえるのは、川の流れと、湯がりの由が茶を注ぐ音だけだった。
母はいまだに、由へ直接謝っていない。それでも私たちは、母が変わるを待って自分たちのを止める必はなかった。謝罪が届けば、そのに受け取るかどうかを考える。届かなければ、決めた距のまま暮らせばいい。その選択権は、もう母ではなく私たちの側にある。
元の朝、事処には噌の雑煮が運ばれてきた。湯気の向こうで由が箸を取り、目をゆっくりわう。途で席をつ必も、めた鍋を気にする必もない。
「温かいうちにべられるって、こんなにおいしいんだね」
由は急がず、次のを運んだ。誰かに呼ばれる気配がしてもちがらず、窓のを眺めてから、また椀へ箸を伸ばす。そのゆっくりした作のつつが、までとの違いを静かに示していた。
その言葉に、私は返事ができなかった。由が失ってきたものは、167万8000円でも、504万円でも測りきれない。けれど、これから取り戻すだけは、もう誰にも差しさないと決めていた。
窓のでは、朝を受けたが静かに輝いていた。由は自分の席に座ったまま、温かい雑煮をべている。
それだけの正を、私たちは9かけて、ようやく取り戻した。