"母に買った家を狙う婚約者" 第1話
「結婚に、自分のおで母親にマンションを買ったですって? 由美さん、あなた何を考えているの?」
子の甲い声が、級の個に響いた。廊を歩いていた仲居の音が瞬止まり、テーブルのでは子が握った湯呑みの蓋が細かく鳴っている。まだ正式には姑でもない女性が、まるで自分の財布から勝に数千万円を持ちされたかのような顔で、私を睨みつけていた。
私は鳴り返さなかった。膝ので両を組み、めかけた煎茶を見つめていた。母にマンションを買ったことを話せば、なくとも「親孝ね」くらいは言ってもらえるとっていた自分が、急にひどく愚かにえた。
「都内でしょう? 古とはいえ、い買い物じゃないわよね。まだ健と結婚もしていないのに、どうして自分の実ばかりにそんなを使えるのよ」
「母は膝が悪くて、今のでは階段をりりするのが難しくなってきたんです。1階で、病院にもい部が見つかったので」
「そんな事はりません」
子は私の説を途で切った。
「事なのは順番よ。あなたは来、うちの男と結婚するなの。普通ならまず結婚式、居、それから将来の族のためにおを残すでしょう。自分の母親だけ先にさせるなんて、嫁としての自覚がりないとわない?」
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その言葉を聞いた瞬、胸の奥にさな違が刺さった。「嫁として」という言い方もそうだったが、なぜ私が結婚に自分で貯めたおの使いを、子にここまで責められなければならないのかが分からなかった。
隣に座っていた婚約者の健が、周囲を気にするように襖へ目をやった。
「母さん、声がきいよ」
たしなめてくれたので、ほんの瞬だけした。
けれど健はすぐに私へ向き直った。
「でも、由美。母さんの言いたいことも分かるよ」
その声音はっていたよりたかった。
「僕たちはこれから夫婦になるんだ。結婚式にもがかかるし、居だって具だって必だろ。それなのに今から自分の実ばかり優先されたら、結婚も同じことをされるんじゃないかって配になるよ」
「実ばかり優先?」
「そうだろう。結婚したら、まず僕たちの庭を第に考えてもらわないと」
子がきく頷いた。
「その通りよ。あなたは男の嫁になるの。あなたのお母さんはもうでしょう。自分の老くらい自分で考えるべきじゃないの?」
母は働き続け、私の学の学費までした。そのせいで膝を悪くしただった。その母に向かって「自分の老くらい自分で考えろ」と言われたような気がして、胸の奥がえていった。
それでも私は声を荒げなかった。
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「分かったわ」
そう言うと、子の顔がぱっとるくなった。
健もほっとしたように肩の力を抜いた。
「分かってくれたならいいんだ。もうマンションを買ったことは仕方ないとして、これからは——」
「じゃあ結婚は、お互い自分の親には1円も援助しないってことでいいよね」
健の言葉が止まった。
にしていたおしぼりが、テーブルへ落ちた。
子も腕を組んだ姿勢のまま固まった。
「……何ですって?」
「健が言った通り、結婚は自分たちの庭を第にするんでしょう。私は母のまいをもう用したから、結婚に母へ活費を渡す予定はないわ」
私は2の顔を交互に見た。
「だから健も、ご両親には援助しない。それなら公平でしょう?」
健は答えなかった。
ほんの数秒まで私に説教していたが、急に言葉を失っている。彼の線は落ち着きなくき、額にはうっすら汗が浮かんでいた。
子が慌ててを乗りした。
「ちょっと待ちなさい。それとこれとは話が別でしょう」
「何が違うんですか?」
「あなたは男の嫁になるのよ。夫の親を支えるのは族として当然じゃない」
「妻の親を支えるのは当然ではないんですか?」
子の唇が止まった。
「私は自分で働いて貯めたおで、母のまいを用しました。健のご両親も、ご自分たちの老の準備はされていますよね」
その瞬。
子の顔が、はっきり変わった。
りで赤かった頬から血の気が引き、代わりに焦りが浮かんだ。