"親族席から消された母と24年目の離縁" 第28話
私が求めていたのは、戸籍の母親という称号ではない。
謝の言葉でも、老の世話を焼いてもらうことでもない。
ただ私がそこにいて彼のために汗を流したという事実を、なかったことにされないこと。
そのたった1つの願いが、法律や血縁という枠を全てした今、初めて彼に届いたのだ。
「をげて、ゆうと」
私の静かな声に、彼はゆっくりと顔をげた。
「お茶、もうめてしまったわね」
私はちがり、台所の方へと向かった。
まな板のには、先ほど切りかけだったネギと豆腐がそのまま残されている。
私は包丁をに取り、ネギを刻む作業に戻った。
背で擦れの音がして、ゆうとが台所の入りにっている気配がした。
「何か伝う」
彼がし慮がちに、背越しに声をかけてきた。
私はネギを切るを止めず、まな板の横にあるもう1本のネギを顎でしゃくった。
「じゃあ、そのネギ切って」
ゆうとはさく息をみ、ゆっくりと台所へを踏み入れた。
彼は台所の流しで丁寧にを洗い、私の隣にってもう1本の包丁をに取った。
狭い台所に、2がネギを刻むリズミカルな音だけが響き渡る。
げさな謝罪も、涙ながらの解の言葉も、今の私たちには必なかった。
ただ同じ所で同じ夕の準備をしているという事実だけが、静かにを満たしていく。
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しばらくして、ゆうとが包丁をかすをしだけ止めた。
「母さんって、呼んでもいい」
彼の声はかすかに震えていたが、そこに迷いはなかった。
私は自分のを止めることなく、定の速度でネギを刻み続けた。
「呼びたいならね」
「うん」
しのが空き、ネギを切る音だけが続いた。
「母さん」
私は包丁を置き、げさに泣くこともなく、ただ静かに彼の横顔を見た。
「何」
私がそう返すと、ゆうとは泣き笑いのような表で再びネギを切り始めた。
法な養子縁組という類の繋がりは、もうどこにもない。
血の繋がりという運命も、私たちには最初からしなかった。
それでもここにある24の記憶だけは、誰にも消すことができない事実だ。
1度は全てを失いバラバラに壊れた私たちが、今ここでもう1度、お互いを族として選び直そうとしている。
窓のではの始まりを告げる番が、たい夜空の奥で静かに、確かなを放っていた。