"親族席から消された母と24年目の離縁" 第1話
私はテーブルを挟んだ向かい側に座り、静かに彼を見つめた。
息子のゆうとは、し言いにくそうに線を逸らした。
「の親族席なんだけど」
彼はテーブルのに線を落としたまま、言葉を続けた。
「実母に座ってもらうことにしたんだ」
私はその言葉を聞いて、ただ静かに彼の顔を見つめ返した。
「2いると向こうも気まずいし、けい子さんは来ないで欲しい」
24、私が彼を育ててきた。
しかし、その24という歳が、たった数秒の言葉で消されようとしている。
りよりも先に、たい波が元をっていくようだった。
私はさく頷き、1つだけ条件をつけた。
「じゃあ最までその考えでいてね」
私の言葉を聞いて、ゆうとは底ほっとしたような顔で笑った。
「分かってくれてありがとう」
彼は再び私に線を向けた。
「けい子さんなら絶対に分かってくれるとってたよ」
その無邪気な笑顔が、私の胸の奥をたく切り裂いた。
彼は自分の放った言葉のさに、全く気づいていない。
24、私が彼に注いできたは、都のいいクッションになっていた。
いくら踏みつけても、傷つけても、決して壊れない全なもの。
だからこそ、1番切なに私を切り捨てるという残酷な選択ができたのだ。
私はめ切ったお茶の入った湯呑みを見つめたまま、静かに言った。
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「、いんでしょう」
彼は湯呑みから線をげ、私を見た。
「く休みなさい。顔がむくむわよ」
ゆうとはちがり、きく頷いた。
「うん。おやすみ、本当にごめんね」
彼は何事もなかったかのように、2階の自分の部へとがっていく。
階段を登る音が消え、バタンという音がのに響いた。
静まり返った居で、私はゆっくりと息を吐きした。
鳴りつけることなど、いくらでもできた。
1歳のから夜通し病した記憶を、並べてることもできた。
医学部に入るまでどれだけ計を切り詰めてきたかを、突きつけることもできた。
でもそれをにした瞬に、24のはただの請求になってしまう。
恩を着せて奪い取った親族席に、体何のがあるというのか。
私はちがり、隣のへと向かった。
暗い部の隅で、桁に掛けられた黒留袖が静かにを吸い込んでいる。
のために、何ヶもから準備していたものだ。
質を取り、帯をわせ、彼が派にれ姿を見せるを待ちにしていた。
私はその黒留袖をに取り、ゆっくりと畳み始めた。
背から、かすれた声が聞こえた。
「式にかないのか」
振り返ると、夫のかず彦が所なげにっていた。
彼は先ほどのゆうととの会話を、隣の部で聞いていたはずだ。
それでも、息子の残酷な提案を止めることはしなかった。
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私は黒留袖を畳みながら、静かに答えた。
「ゆうとが来ないで欲しいと言ったのよ」
かず彦は気まずそうに線を逸らした。
「あの子が選んだのは、産んでくれたお母さん。こういうことでしょう」
私は畳んだ黒留袖を箱に納めた。
「でも、おがこれまであいつのためにどれだけ苦労してきたか、それを今更言って何になるの」
私の静かな声に、かず彦はを閉ざした。
彼はずっと自分の過の過ちに向きうことを避けてきた。
24、別の女性とのに子供を作ったという事実。
そして、自分が父親として何もできなかったという責任。
それをゆうとにられることを恐れ、ただの物分かりのいい父親でいようとしたのだ。
私がどれほどの覚悟でゆうとを族として迎えたか。
法な責任まで背負って彼を選んだのは誰だったか。
その真実を、彼は1度も息子に語ったことがない。
結果として、私はお父さんのしい奥さんという曖昧なのままだった。
かず彦はしを乗りし、私を見た。
「俺からあいつに言い聞かせようか」
かず彦のその言葉に、私は静かに首を振った。
「やめて、今更無理やり座らされても惨めなだけよ」
私は黒留袖の入った箱を、押入れの奥へと押し込んだ。
「あの子は自分のお母さんはさやかさん1だと決めたのよ」
私はちがり、夫を真っ直ぐに見つめた。
「だから、あなたも余計なことは言わないで」
かず彦は目を伏せたまま、何も答えなかった。