"軍艦島、命をつないだ白い飯" 第7話
活がいということは、面倒なこともい。
子ども同士の喧嘩。
夫婦の揉め事。
誰が何を買った。
どこのにしいテレビが入った。
どこの亭主が酒をみすぎた。
隠したくても、全部は隠せない。
その代わり、誰かが病気になれば分かるのもかった。
魚をく買えば隣へ尾回す。
子どもをし見てもらう。
夕飯のおかずを分ける。
閉ざされた島だからこそ、同士の距もかった。
男は、そういう暮らしが好きなもあれば、嫌になるもあった。
料の翌、隣の男が酒瓶を抱えてやってきた。
「もう」
「昨もんだろ」
「昨は昨たい」
妻が呆れた顔をする。
「静かにしてくださいよ。子ども寝ますから」
はちゃぶ台の隅で酒をんだ。
つまみは漬物と、残っていた魚。
豪勢ではない。
それでも仕事を終えたなら分だった。
隣の男が言う。
「本の兄貴が、こっちは持ちで羨ましいって言うんですよ」
「実際、料はよかやろ」
「そうですけどね」
男はコップを置いた。
「兄貴は1000メートルまでりませんから」
とも笑った。
笑うしかない話だった。
い料。
い社宅。
。
娯楽。
分な米。
酒。
煙。
から見れば、端島は「豊かな炭鉱島」として映る。
確かに違いではない。
だが、その豊かさは、危険な労働への対価だった。
翌朝になれば、男たちはまた作業着を着る。
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妻が弁当を包む。
米をしっかり詰める。
漬物。
魚。
そのの残り物。
豪華さより、腹持ちが切だった。
男が弁当を受け取ると、妻が言った。
「ちゃんとべてね」
「分かっとる」
「昨、酒みすぎ」
「隣が持ってきたんだ」
「に入れたのはあなたでしょう」
また返す言葉がない。
男は笑いながら玄関をた。
廊には別の坑夫がいた。
には同じような弁当包み。
は目をわせる。
「くか」
「こう」
社宅の台所から炭鉱へ。
そして底から再び卓へ。
端島の暮らしは、その往復でできていた。
端島の暮らしを語る、「本でも数の」「娯楽のい島」「テレビ普及率のさ」といった華やかな話が残る。
しかし、卓に並ぶ豊かな飯だけを見てしまえば、その理由を見失う。
坑夫がい賃を受け取ったのは、会社が特別に気よかったからだけではない。
危険だからだ。
底くへりる。
と湿気に耐える。
ガスを恐れる。
落盤を警戒する。
坑内災が起きれば、自分のだけで逃げ切れるとは限らない。
男はある、坑内で突然作業を止められた。
しれた所で異常があったらしい。
詳しいことはすぐには伝わらない。
ただ、坑内では「何かあった」というだけで空気が変わる。
誰も余計な話をしなくなる。
指示を待つ。
を澄ます。
自分たちのいる所まで危険が来るのか。
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戻れるのか。
男はその、朝にべた飯をいした。
妻がし焦がした魚。
息子が牛乳をこぼしたこと。
どうでもいいはずの景が、異様にはっきり浮かぶ。
結局、そのは事には至らなかった。
へ戻ると、仲のが言った。
「今はむぞ」
男も頷いた。
「もう」
それだけだった。
怖かったとは言わない。
族へも、細かく話さない。
妻から「今、何かあった?」と聞かれても、
「し止まっただけ」
と答えた。
妻もそれ以聞かなかった。
らない方がいいとったのか。
聞けばから毎送りせなくなるとったのかもしれない。
夕には飯と魚がた。
男はいつもよりゆっくりべた。
ずつみ込む。
噌汁をむ。
漬物を噛む。
普段と何も変わらない。
だからこそありがたかった。
炭鉱の飯とは、単にカロリーを補するものではなかった。
坑内とを分ける境界でもあった。
を脱ぐ。
呂に入る。
炭を落とす。
飯をう。
酒を杯む。
子どもの声を聞く。
そこまで来て、ようやく坑夫はの仕事かられられる。
もちろん、数にはまた戻らなければならない。
だからこそ、そのいを支える事にはがあった。
事故が起きたもある。
坑内災が起きたもある。
底の採炭という仕事そのものが、常に危険を含んでいた。
それでも炭は求められた。
国も企業も庭も、炭の力を必としていた。
列。
。
鉄鋼。
発。
戦の復興。
度成。
そのきな流れの番底で、男たちは炭を掘った。