"3200万円を隠した姑と「養ってやる」の夫" 第29話
、私は自分のを選ぶより夕の特売品を探すことに必だった。
私がエプロンをつけて働くことを、誰もが当たりだとっていた。
でも娘だけは、私のその見えない労働の価値を誰よりも認めてくれていたのだ。
していたわけではないのに、自然と涙が溢れてきた。
それはりやしみの涙ではない。
自分のがようやく自分の元に帰ってきたという、温かい堵の涙だった。
私は娘の肩に顔を埋め、声をげて泣いた。
理尽な扱いに耐え続けた々が、涙と緒にしずつ浄化されていくのをじた。
それから数ヶが過ぎ、季節はからへと向かおうとしていた。
藤弁護士からの最の報告が届き、法な続きは全て完全に終わった。
叔父からの話によると、夫は吉川に捨てられた、でいアパートに暮らしているそうだ。
慰謝料の支払いと残りの借に追われ、会社でも居所を失いつつあると聞いた。
義母は資を使って施設に入ったが、相変わらず文句ばかり言って周囲から完全に孤しているそうだ。
しかしその話を聞いても、私のには何のも湧かなかった。
ざまあみろという優越も、れみすらもない。
彼らはもう私のとは全く関係のない、ただの過のに過ぎないからだ。
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私の活は驚くほど穏やかに、静かに回っている。
事は自分のべたいものを、自分のペースで作る。
掃除も洗濯も、休の気が良いに音楽を聴きながらのんびりとこなしている。
誰かのために急ぐ必も、誰かの嫌を伺う必もない。
自分のおで自分のために、好きなものを買う。
そんな当たりの自由が、今の私には何よりもおしくじられた。
の終わり、会社で度末のきな棚卸しがあった。
で番忙しい、あの激務の期だ。
私は責任者として夜遅くまでシステムと睨みい、膨なデータを処理した。
全ての作業が終わり、引き継ぎを済ませて会社をたのは、空がみ始めた頃だった。
の寒さがまだ残る朝、午分。
私はたい空気のを歩き、がへとたどり着いた。
ポケットから鍵を取りし、ドアをける。
のは完全な静寂に包まれている。
廊を塞ぐ理尽な布団のはない。
私を待ち構えて理尽な命令を投げつける声も聞こえない。
ただ、私の帰りを静かに待つ穏やかで全な空が広がっているだけだ。
私は靴を脱ぎ、玄関の壁に目をやった。
フックにはあの事用のエプロンが掛けられている。
かつて私が無識にを伸ばし、自分を縛りつけていた鎖。
私はいつもの癖で、しだけそのエプロンにを伸ばしかけた。
そのだ。
棚のに置いてある私の帳が目に入った。
今の付の欄には『美、休み』という文字がかれている。
誰かのために働く休みではなく、私自のための休みだ。
私は伸ばしかけたを、ゆっくりと戻した。
エプロンはフックに掛けたままにしておく。
もう私が無理をして、これをつける必はないのだ。
私は鞄を置き、階の寝へと向かった。
遮カーテンを引いた部のベッドに、静かに体を横たえる。
えたが毛布の温かさに包まれていった。
目を閉じると、いらぎが全を満たしていく。
今というを、私は私のためだけにきることができる。
その確かな満を胸に抱いたまま、私は静かに眠りに着いた。
もまた、私だけのしい朝がやってくる。