"3200万円を隠した姑と「養ってやる」の夫" 第27話
義母はソファに座っている夫のにった。
義母の声はすがりつくような々しい響きだった。
「幸、私これからどうすればいいの……?」
義母は尋ねる。
「私の荷物、どこに運べばいいの? あなたが借りるアパートに、私の部はあるんでしょう?」
義母はまだ、息子が自分を見捨てるはずがないと信じていた。
しかし、顔をげた夫の目は、母親に対するなど欠片もないたく濁ったものだった。
夫の酷な言葉が義母を突き刺す。
「俺が借りるのは、敷なしのいワンルームだ。母さんのいるスペースなんてない」
義母は息を呑んだ。
「そんな……じゃあ私はどこにけって言うの?」
夫は吐き捨てるように言い、再び俯いた。
「千百万あるんだろう。自分で施設を探して勝に入ってくれ」
義母はに打たれたようにち尽くした。
義母は泣きそうな声で訴えた。
「自分で探すって……私ネットなんて使えないし、そんな続きでできるわけないじゃない!」
義母は続ける。
「美さんを追いしたら、あなたが私の面倒を全部見てくれるって約束したじゃないの!」
その言葉を聞いた瞬、夫は弾かれたように顔をげ、母親を睨みつけた。
夫の鳴り声がリビングに響き渡った。
「俺のせいにするな! 母さんが美を政婦みたいにこき使わなきゃ、こんなことにはならなかったんだ!」
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夫のりは止まらない。
「母さんが調子に乗って美をいじめたから、俺までを追いされる羽目になったんだろうが!」
自分の倫と財産隠しを棚にげ、全ての責任を母親になすりつける。
それが追い詰められたの本当の姿だった。
義母は信じられないものを見るような目で、息子を見つめた。
番頼りにしていた息子から完全に見捨てられたのだ。
義母の膝から力が抜け、そのへへたり込んだ。
「ああ……」
義母のから言葉にならない咽び泣きが漏れた。
千百万円という。確かにそれは老をきるためのきな武器になるはずだった。
しかし、おは温かいご飯を作ってはくれない。い布団を干してもくれない。
病院の予約も役所の続きも、おが勝にいてくれるわけではないのだ。
義母は涙で濡れた顔をげ、キッチンの隅を見つめた。
そこには私が昨まで使っていた事用のエプロンが、綺麗に畳まれて置かれている。
嫁がやるものだと信じて疑わなかった、無償の優しさと労働。
自分がどれほど恵まれた環境にいたのか。
どれほどきなものを自分の傲さで放してしまったのか。
義母はにをつき、ポロポロと涙をこぼしながら、ただ静かに震え続けた。
夕方、のに夫が配したさな赤の軽トラックが止まった。
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夫の荷物はダンボール数箱とスーツケースつだけだった。
義母は所にあるビジネスホテルに、とりあえず数滞することになった。
そこから自分で施設を探さなければならない。
がい取りで玄関に向かった。
私はリビングのドアのにち、腕を組んでその背を見つめていた。
夫が玄関のドアのノブにを掛け、度だけ振り返った。
その顔には、悔と言いようのない惨めさが張り付いていた。
何かを言おうとしてをいたが、結局何の言葉もてこなかった。
義母もすがるような目で私を見た。
しかし私のたい線に射すくめられ、すぐに逃げるように目を伏せた。
誰に向けたものか分からない、か細い義母の呟きだけが玄関に落ちた。
「お世話になりました……」
私は何も答えず、ただ静かに顎を引いた。
い属のドアがゆっくりと閉まる。
パチン、と錠が落ちる音がのに響き渡った。
そしての音が、しずつざかっていった。
私は呼吸をつした。
吸い込んだ空気はこれまでとは全く違う、澄み切ったがした。
のは、完全な静寂に包まれた。
もう無い嫌を聞くことも、理尽な命令に従うこともない。
私はゆっくりとリビングを見渡し、そしてキッチンへと歩きした。
ここから始まるのは、誰かのための犠牲ではない、私自のしいだ。
そして数、私はこの静かなでずっと待っていたある物を迎え入れることになる。