"3200万円を隠した姑と「養ってやる」の夫" 第22話
静まり返った部ので、壁掛け計の秒針の音だけが夜更けにきく聞こえる。
藤弁護士がテーブルのに置いた枚の婚届のコピー。
そこには証として署名された吉川の名と、鮮な朱の印が残されていた。
夫叔父がそのをじっと見つめ、唸るような声をした。
「幸、この吉川という女性は誰だ?」
叔父の声は決してきくはなかった。
しかしそのをうような静かなりの響きが、夫を震えがらせた。
夫は額から脂汗を流し、泳ぐ線で部を彷徨った。
夫の声は裏返り、ひどく掠れていた。
「あ、いいや。それはただの会社の部でして……」
夫は必に言い訳を続ける。
「産の資格を持っているので、の査定のことでし相談に乗ってもらっていただけで……」
その苦しい言い訳に、夫叔父は太い眉をピクリとかした。
叔父の鋭い指摘がぶ。
「ただの部が、司の婚届に証として々として判を押すのか」
夫は言葉に詰まった。
「それは頼みやすかったからで、決してやましい関係などではなく……」
夫の言い訳は、もはや誰のにも届いていなかった。
藤弁護士が静かにをいた。
「やましい関係ではないとおっしゃるのですね」
弁護士は元のファイルから、もう枚の類を取りした。
「ではなぜ、そのただの部である吉川さんが、あなたのお母様の実印と通帳を持ち、の窓へったのでしょうか?」
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その言葉に最も激しく反応したのは、夫叔父ではなく義母のだった。
義母は子から腰を浮かせ、目をきく見いた。
義母の顔には純粋な混乱が浮かんでいた。
「え、幸……それってどういうこと……?」
義母は震えるで夫の腕を掴んだ。
「私の通帳と印鑑預かって、しいの資にするって言ったじゃないの。どうして私のらない女のが、私の千万円を引きそうとしているのよ!」
義母の痛な叫びがリビングに響いた。
私はその様子を、たいお茶をみながら静かに見つめていた。
夫は私を追いすために、義母の千百万円を利用しようとした。
そして義母も、私を追いして息子とでしいに入り、悠々自適な老を送るつもりでんで資を提供したのだ。
は共犯者だった。
しかし夫の本当の計画は、義母の像とは全く違うものだったのだ。
夫は義母のを振り払い、必で取り繕おうとした。
「ば、母さん違うんだ。彼女はただの代理で、俺が忙しかったからお使いを頼んだだけで……」
藤弁護士のややかな声が、夫の言葉を切り捨てた。
「お使いで千万円ものをに任せるがどこにいますか」
藤弁護士は枚のパンフレットのコピーをテーブルに広げた。
「私どもの調査によりますと、吉川さんが千万円を振り込もうとしていた先は、ある都内の産会社の座でした。
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これがその産会社が販売している物件です」
夫叔父がそのコピーをに取った。
それは都の等に建つ、築の層マンションの案内だった。
取りはゆったりとした1LDK。システムキッチンに最のセキュリティ。
藤弁護士は淡々と物件の説を読みげた。
「若い共働きのカップルに気の、級デザイナーズマンションです」
しかし弁護士はそこで言葉を区切り、義母の顔を真っ直ぐに見つめた。
「お母様、このマンションには齢の方が同居できるような部はつもありません」
義母の顔からさっと血の毛が引いた。
義母は呆然と呟き、夫の顔を見た。
「どういうこと……?」
藤弁護士の言葉が、義母のに決定な絶望を打ち込んだ。
「齢者向けのバリアフリー設備もなければ、子が入るスペースもありません。完全に若い男女がだけで暮らすための設計です」
弁護士はさらに続ける。
「ご主はお母様の千万円を使って、である吉川さんとで暮らすの巣を購入しようとしていたのです」
リビングはを打ったように静まり返った。
義母はを半きにしたまま、ガタガタと震え始めた。
夫が自分を裏切るはずがない。自分は番切にされている母親だ。
そう信じて疑わなかった義母の元が、完全に崩れ落ちた瞬だった。