"3200万円を隠した姑と「養ってやる」の夫" 第14話
翌朝。私が台所へくと、夫と義母が卓でひそひそと話し込んでいた。
キッチンの隅には昨から放置されたままの燃ゴミの袋が、嫌な匂いを放ち始めている。
の顔にはらかな焦りと、隠しきれない疲労が浮かんでいた。
私が姿を現すと、は弾かれたようにを閉じ、自然に線を逸らした。
夫は私を横目で睨みつけ、探るようなずった声で聞いてきた。
「おい、昨の夜、誰かから話がかかってこなかったか?」
私は蔵庫から麦茶のボトルを取りし、グラスに注ぎながら答えた。
「いいえ。私は疲れていたのでく寝てしまいましたけど」
夫はしホッとしたような、それでも疑いきれないような複雑な顔をした。
「そうか。いいや。何でもない」
義母が夫のパジャマの袖を引き、すがるような目で見つめた。
「幸、どうするのよ? あのおがないと私たち……」
夫は声を荒げ、逃げるように洗面所へ向かった。
「母さん、今は黙っててくれ!」
私はその、再び会社に休暇を申請していた。
夫がかけた、私は支度をえ、たいが吹くへた。
向かったのは、役所の民窓だ。
私は戸籍謄本と、このの産登記簿謄本を取得する続きをった。
昨、無料相談で弁護士が言っていた言葉がのに響いていた。
『ご主が勝にを売却することは、名義が半分である以法には能です』
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発された登記簿謄本を確認すると、違いなく私の名が持ち分の半分として記載されていた。
これで勝にを売られる配は完全に消えた。
私は謄本をバッグの奥くにしまい、駅のカフェで温かいコーヒーをんだ。
そのの夕方。私がに帰ると、いつもよりく帰宅していた夫がリビングのソファにく腰掛けていた。
義母の姿は階にはない。
夫の顔は朝の焦りから転して、妙に落ち着き払っていた。
いや、無理に落ち着いているように見せかけているだけだ。
私がコートを脱ぎ、エプロンをつけずにリビングへ入ると、夫はテーブルのに枚の類を置いた。
夫の声はわざとく、の主としての威厳を保とうとするように作られていた。
「美、ちょっと座れ」
私は無言のまま、テーブルの向かい側に座った。
夫が指先で押ししてきたその類には『婚届』というきな文字が印刷されていた。
そのには、財産分与に関する簡単なのようながなっている。
私は表を全く変えることなく、そのを見つめた。
夫は自分が寛な決断をしたかのような傲な調で言った。
「もう終わりにしよう。おもこので母さんと暮らすのは限界だろう。俺もおの最のたい態度にはもう耐えられない」
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夫は全てを私のせいにして、都よく関係を終わらせようとしている。
夫は続けた。
「は俺が引き取る。残りのローンも俺が払ってやるから、おはしの荷物だけ持ってつでていけばいい。慰謝料は請求しないでおいてやる」
千万円が引きせなくなった今、夫は私を追いすしかがなくなったのだ。
私を無文で追いしてを自分のものにし、それを売ったおで吉川とやり直す。
それが彼が焦って考えした次の計画なのだろう。
私は婚届をに取り、静かに目を通した。
夫の名と印鑑はすでに押されている。
私が淡々と類を眺めていると、夫はで笑った。
「おが母さんをいじめて、勝に座のおを移したんだ。これでも穏便に済ませてやってる方だぞ」
夫は自分の倫を完全に隠し通せるとい込んでいる。
私は婚届の側に目を向けた。
そこには婚を証するための、証の記入欄がある。
証欄にはの名がかれていた。
は義母である『佐』。
そしてもうの名を見た瞬、私は自分の目を疑った。
そこには見慣れたらしい丸文字で『吉川』という名字がかれていたのだ。
フルネームのには彼女の所と、文判の印鑑が押されていた。
夫は自分のに、私たちの婚届の証を頼んでいたのだ。
く婚を成させたい吉川が、夫を急かして自分で名をいたのだろう。