"じいちゃんの遺言" 第2話
俺はそれ以文字を追うのをやめた。 「んでまで説教とは、とことん暑苦しいじいちゃんだ」
「さてと……めるにむか」 コーヒーをみ、再びこの圧倒な静寂にを委ねようとした、まさにそのだった。
——ドサッ。
玄関の方で、のにたい何かが倒れ込むような、鈍い音がした。 「……の音か?」 いや、違う。確かに何かがぶつかった音だった。根からまとまったの塊が落ちたにしては、音がすぎる。野の鹿か、熊でも迷い込んだか? 無してコーヒーをもうとしたが、どうにも妙な胸騒ぎがして落ち着かない。首のろの産毛が逆つような、嫌な予。
「くそ、なんだよ……こんな夜更けに」 俺はマグカップを乱暴に置き、い腰をげて玄関へと向かった。 板張りの廊からにりると、底えするような気がの裏からいがってくる。俺は恐る恐るなの引き戸にをかけ、力を込めてガラッとけた。
ヒュオオォォォッ!! けた瞬、猛烈な吹が鋭い氷の粒を伴って、俺の顔をバシバシと叩きつけた。 「うわっ、何も見えねえ!」 で顔を覆い、目をけて吹の向こうを凝した。玄関の灯のわずかなかりが、い散るを照らししている。
そして、元を見た瞬、俺は息を呑んだ。臓が鐘のように打ち始めた。 そこにいたのは、に半分埋もれかけた、さな2つの塊だった。
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しかも、微かにいている。 よく見ると、それはボロボロの汚れたを着た、さな子供だった。それも、2。
「おい、嘘だろ……?」
こんな奥に。しかも、でも歩にれば遭難しかねないこの猛吹のに、子供がいるわけがない。 孤した集落のさらにれにあるこのまで、どうやって? 覚かとったが、2つの塊はを寄せい、お互いを庇うようにして刻みに震えていた。
の子供が、俺の気配に気づいたのか、ゆっくりと顔をげた。 で濡れたい髪が額にべったりと張り付き、唇は血の気を失い、恐ろしいほどのに変している。まつ毛にはいがりていた。 「ごめんなちゃい……」
蚊の鳴くような、の音にかき消されそうな微かな声。 そう呟くと、その子は限界を迎えたように、コクリと崩れ落ちた。もう1の子も、横の子のの裾をさなでギュッと握りしめたまま、ピクリともかない。
「おい! しっかりしろ!」
俺は反射にのにびし、2をまとめて抱きかかえた。 (軽い……!) 驚くほど軽かった。まるでに空気しか入っていないかのような、羽のような軽さだった。齢にそぐわない痩せ方だ。そして、抱きしめた体は氷のようにえ切っていた。
「ぬなよ! 頼むから、ぬなよ!」
俺はにを取られそうになりながらも、必に踏ん張った。
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界は真っで、ほんの数歩先の玄関すら見失いそうだ。だが、腕のにある確かなみ――失われかけている2つの命のみだけが、俺を現実につなぎ止めていた。
かつて俺が守りきれなかったもの。 ホテルの厨で失ったや、部たちを守れなかった悔。そんな形のない過の傷など、今はどうでもよかった。 今、俺の腕のにあるのは、消え入りそうな2つの本物の命だ。
(絶対に、助ける!)
体の血液が沸騰するような覚だった。吹き付ける吹の寒さなんて、完全に忘れていた。俺は2を抱えたまま、転がるようにしてのへと戻った。
ガラッ、ピシャリ! い引き戸を閉め、の暴を完全に遮断する。 静寂が戻った暗いに、俺の「ハァ、ハァ」という荒い息遣いだけが響いた。 「おい、起きろ! 丈夫か!」
すぐに靴を脱ぎ捨て、2を居へと運び、部で番かいストーブの特等席に寝かせた。 押し入れから客用の分い毛布を何枚も引っ張りし、ガタガタと震え続けているさな体に何にも巻きつけた。
「たく、なんてこった……」 洗面所からお湯で濡らしたタオルを持ってきて、2の顔についたとを優しく拭き取りながら、改めてその姿を観察した。 どう見ても双子の女の子だ。顔の輪郭も、まつ毛のさも、背丈も瓜つ。齢は3歳か、いって4歳くらいだろうか。
着ているは、ペラペラののキャラクターもののパーカー1枚だけ。