"私の命を八千万円にした夫の末路" 第13話
「……守ってくれて、ありがとうね」
体に呟き、私はく息を吸い込んだ。
胸の奥の、苦しい鉛の塊が、綺麗に溶けっていくような気がした。
◇
ヶ。
晩のたいが、世田の宅の落ち葉を巻きげていた。
築の佐伯邸の柱には、裁判所による競売始の公示が、酷に貼りされていた。
千百万円の抵当権は使され、とは差し押さえられた。 修の会社は事実の破産管財の管理に入り、と修は殺未遂と詐欺未遂の共謀共同正犯として起訴され、拘置所のたい独で公判を待っている。 レナは執猶予がついたものの、夫から即座にくだり半を突きつけられ、残された百万円のカードローンを抱えて破産宣告の続きに追われていると、弁護士から聞いた。
誰もいなくなったの。
私は、さなスーツケースをつだけ引き、アスファルトの坂をっていた。
につけているのは、物だが清潔なコート。 指から結婚指輪はすでにし、ゴミ箱に捨てた。
元に残ったのは、私の名義で細々と貯めていた、パートのわずかなへそくりと、実から送られてきたしの活再建資だけ。
千万円などという血塗られたは、円もに入らなかった。 だが、私の両には、誰にも脅かされない、本当の自由が戻っていた。
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坂の、私鉄のさな駅の改札を抜ける。
ホームに滑り込んできたのは、各駅の普通。 乗客のまばらな内に乗り込み、たいシートにく腰をろした。
ガタゴトと、規則正しい属音が響き、がゆっくりときす。
窓のの景が、しずつろへと流れていく。 見慣れた、息の詰まるようなの並みが、ざかっていく。
私はバッグから、駅の売で買ったばかりの、まだ温かい包みを取りした。
包みをける。 塩むすびがつ。
、かじる。
米の甘みと、シンプルな塩の辛さが、舌のにじんわりと広がっていく。
ただの、百円のおにぎり。
誰かの顔を窺うこともなく。 毒が入っていないかと怯えることもなく。 から美しいとえるものを、自分ので買い、自分の志でべる。
そのあまりの温かさに、私の目尻から、ツッと筋の涙が零れ落ちた。
それは悔しさの涙でも、しみの涙でもなかった。
私はの甲でそれを拭い、もう、ご飯をに運んだ。
の窓の向こう、の切れから、柔らかなのが差し込んできていた。