"家出と呼んだ警察を私は許さない" 第12話
自ドアがき、きなスーツケースを押した乗客たちが次々と現れる。 は目を皿のようにして、てくる々のを見つめた。 臓が激しく波打ち、呼吸が浅くなる。
そして、ドアが再びいた。
背がく、がっしりとした体格の男が、系の女性と、さな女の子のを引いて現れた。 男はロビーを見渡し、ふとを止めた。 その線が、群衆ののほうでさく震えている、髪の老女に留まった。
目が、った。
。 の面は消え、焼けした肌にはい皺が刻まれ、派なの男になっていた。 だが、その瞳の輝き。 卓ので「割れとらんね?」と覗き込んできた、あの真っ直ぐで澄んだは、歳のあのと何ひとつ変わっていなかった。
「……航平」
声にはならなかった。 だが、男の喉が激しく痙攣したのが見えた。
男がスーツケースの取を放した。 そして、った。 歳になったも、痛む膝を忘れて駆けしていた。
広い到着ロビーの真んで、つのが衝突するようになりった。
「お母ちゃん……っ!」
「航平……航平ぇっ!」
航平の太い腕が、のさく縮んだ体を力任せに抱きしめた。 のが、息子の広い胸のに埋もれる。 分のを埋めるように、骨がきしむほどのさで抱きしめられた。
航平の肩が激しく震えていた。
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男が、母親の首筋に顔を埋め、目も憚らず声をげて号泣している。 「さくなった……お母ちゃん、こんなにさくなって……っ!」 朝から晩まで働き詰め、息子の帰りを待つためだけにを耐え抜いた母の背は、記憶のの姿よりもずっとく、羽毛のように軽くなっていた。
は、息子の逞しい背を、両でトントンと叩いた。 幼い頃、をした夜にそうして寝かしつけたのように。 「きゅうなったなあ……派になったなあ……」 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、は息子の頬を、額を、太い指を、おしそうに撫で回した。 温かかった。 ではない、血の通った、自分の息子がここにいた。
周囲の旅客や空港職員たちがを止め、涙を浮かべてその景を見守っていた。 誰もを引きそうとはしなかった。
抱擁を解いたは、震えるで持っていた呂敷包みを解いた。 タッパーの蓋をけ、航平のに差しす。
そこには、しめてはいたが、黄がひとつも崩れていない、つの目玉焼きがあった。
航平は目を見張り、その目玉焼きを見つめた。 喉の奥から、くぐもった嗚咽が漏れる。 バッグから割り箸を取りし、震えるで黄を突いた。 とろりと流れた濃い黄い黄を、箸の先で掬ってに運ぶ。
、またと噛み締め、航平はで顔を覆った。
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「……美しいよ、お母ちゃん。……僕の、好きなだ……っ」
「そうか……美しいか。よかった、崩れんでよかった……」
の傍らに、妻にを引かれたさな女の子が、きな瞳でを見げていた。 がしゃがみ込むと、女はさな、温かいをのひび割れたのひらにねてきた。
「……Grandma? おばあちゃん?」
そのらしい声を聞いた瞬、は再び涙を溢れさせた。 、聞くことなど叶わないと諦めていた言葉だった。
「志津ちゃん……。よう来てくれたねえ。おばあちゃんやで……お父ちゃんを、連れて帰ってきてくれて、ありがとうねえ……」
女を抱きしめるのから、の柔らかながり注いでいた。
*
坂の町の古いに戻った航平は、にがると、いち尽くしていた。
玄関のがり框には、が毎買い替えていた、真っいスニーカーが置かれていた。 航平はその靴を見つめ、そっと指先で触れた。 そして、居の奥の、かつての自分の部へとを踏み入れた。
畳半の部の壁には、そこに掛けられ続けたままの、黒い学ランが吊るされていた。 そのには、綺麗に洗濯され、陽に干された、さなの毛糸の肌着。
航平はそのに崩れ落ち、学ランの袖を顔に押し当てて泣いた。 母が、どれほどの孤独ので、どれほどの狂おしいのでこの部を守り続けてきたのか、そのすべてを悟ったのだ。
「お母ちゃん……これを、ずっと……」
「学の入学式に、着せてやりたかったんよ。