みかん小説
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"知らない家族が守った家" 第5話

「主なりの挨拶だったんだといます」

借りている。

使わせてもらっている。

今ここにいないで眠っている。

それを子どもに忘れさせたくなかったのだろう。

忠雄は帳面へ線を落とした。

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自分が野で「さえ戻れば」と繰り返していた頃、京ではらない男が漏りを直していた。

252には、管が凍ったという記録もある。

26には縁側の板を枚取り替え、には庭の柿のの枝が根へ触れないよう切ったとかれていた。

「費用は誰がしたんです」

忠雄が尋ねると、美津は答えに迷った。

「最初の頃は管理する側からていたといます。でもは……」

は?」

「主が自分で払った物もあったはずです」

忠雄は顔をげた。

「なぜそんなことを」

美津は困ったように微笑んだ。

「壊れたままにしておけなかったんでしょうね」

それ以、美津は夫を派なとして語ろうとはしなかった。

にも欠点はあったという。酒をんで帰れば数が増え、なのにを貸し、美津と何度も喧嘩した。

病気になったも「丈夫だ」と言い張り、医者へくのが遅れた。

「ずいぶん頑固なだったみたいですね」

忠雄が言うと、美津はさく笑った。

「ええ。とても」

その笑顔を見た、忠雄は初めてを「自分のへ勝に入り込んだ男」

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ではなく、として像した。

翌朝、正はいつものように仏壇へ座った。

忠雄もれた所へ腰をろした。

が線てる。

「毎朝やってるのか」

「うん」

「面倒じゃないか」

は首を振った。

「父ちゃんがんでからは、僕がやるって決めたから」

その言葉に忠雄は返事ができなかった。

自分の父母の位牌に、の子が父親との約束で線を供えていた。

腹をてる理由など、もうどこにも見つからなかった。

だが、だからといってをこのままずっとませることもできない。

を取り戻したいという気持ちまで違いだったわけではない。

忠雄は、そのつが同することに初めて気づいた。

を気の毒にうことと、自分の権利を放すことは同じではない。

逆に、自分の権利を守ることと、相を追い詰めることも同じではない。

それまで忠雄は、どちらか方しか選べないとっていた。

ていくは、12半ばのに決まった。

美津が借りた部は、ここからかなりかった。

畳半に母子3。炊事は廊の端にあり、でもしかないという。それでも「子どもがいても構わない」と言ってくれる主が見つかっただけで、美津はありがたいと何度も言った。

引っ越し夜、美津は階を隅々まで掃除した。

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障子の桟を拭き、台所の竈を磨き、庭に置いていた桶まで洗った。澄子が「そこまでしなくても」と言っても、「く使わせてもらいましたから」とを止めなかった。

忠雄は階でそれを聞いていた。

胸がかった。

自分が追いした。

そう考えると居が悪い。

だが実際には、には正式にこのみ続ける権利がない。杉浦にも、ようやく戻ってきた自宅で暮らす権利がある。

何度考えても、簡単な答えはなかった。

翌朝、美津たちの荷物は驚くほどなかった。

布団が3組。さな箪笥。類の入った呂敷。鍋がつと、器を入れた箱。

7く暮らしたというのに、それだけだった。

くなってから活を縮め、美津はしずつ物を売っていたらしい。

、本当に申し訳ありませんでした」

玄関で美津がげた。

澄子は「どうかお元気で」と言いながら、恵子の肩へ毛糸の襟巻きを巻いてやった。

は正の荷物を持っていた。

千恵は泣きそうな顔で恵子のを握っている。

に正が「ちょっと待って」と言い、仏った。

忠雄はを追わず、廊からその背を見ていた。

はいつものように正座し、線てた。

目を閉じ、わせる。

そしてがると、忠雄のところへ来た。

「おじさん」

「何だ」

「もう僕、ここでお線あげなくていい?」

忠雄の胸に、鋭いものが刺さったような覚がった。

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