みかん小説
本棚

"合格発表の日、父は消えた" 第11話

町の々から非難され、付きいのあった友を失った。それでも千は、叔母をかばわなかった。

真実を話したことは必為であり、その結果まで免除される理由にはならない。

瀬は千へ謝罪のを送ってきた。

《制度からこぼれる子を救うためには、の変更が必だとっていました》

は、その部分まで読んでを閉じた。

返事には文だけいた。

《救う相を、本に無断で作り替えることは支援ではありません》

それ以のやり取りはしなかった。

正雄の最のタクシーは、完全に廃となった。

は会社の許を得て、27号から料メーターだけを引き取った。内部に残った運記録は、父が毎美咲を送っていた証拠であり、事件の真相をくきっかけでもあった。

ただ、千はそれを居に飾らなかった。

箱へ入れ、父の練習帳や正しい格通とともに押し入れへしまった。隠すためではなく、毎を見ながら活する必はないとったからだった。

初めての授業の、千は仕事を終えてから学のオンライン講義に接続した。

画面には齢も職業も異なる学たちが並んでいた。子育てをしながら学ぶ、定に資格を目指すを卒業したばかりの若者もいた。

講師は最初に、なぜ社会福祉を学びたいのか順番に尋ねた。

広告

の番が来た。

「私は19歳のとき、庭の事学できませんでした」

そこまで言い、し考えた。

「でも、失った20を取り戻すために来たわけではありません。今の仕事で会うたちに、選択肢を説できるようになりたくて来ました」

講師はうなずき、次の学を指名した。

げさな拍も、な音楽もなかった。

ただ授業が始まった。

講義を終えると、計は午10を回っていた。千は台所で湯を沸かし、遅い夕を用した。

机の端には、帰宅途に自分で買った黄いチューリップが飾られていた。

20、父が買った部座席で潰れ、娘には届かなかった。

父が練習帳にいた《ごうかく おめでとう》という言葉も、くなってから14にようやく千へ届いた。

遅すぎた言葉が、失われた活を返してくれるわけではない。

父が無断で別の女に自分の名を貸したことも、叔母の嘘も、美咲の沈黙も消えなかった。

それでも千は、父の最の記憶を、を縛る借にはしなかった。

父のために学へくのではない。

父を許すためでも、父に正しかったとわせるためでもない。

39歳になった自分が学びたいから、学ぶ。

翌朝、千に父の練習帳を度だけいた。

の横にかれた文字を見つめ、さく笑った。

広告

「ありがとう。でも、今度の格は私のものだよ」

練習帳を閉じ、棚へ戻した。

窓のでは、を迎えたタクシーが駅へ向かってっていた。どのにもそれぞれき先があり、料メーターにはつずつ違う距が刻まれていく。

20、正雄のメーターに残された最の運賃は0円だった。

だが、その程までしなかったわけではない。

父が誰を乗せ、何を守ろうとし、どこで選択を違えたのか。その記録が残っていたからこそ、千は父をに自分を捨てたとして終わらせずに済んだ。

に、善の父親だったという言葉だけで、すべてを許さずに済んだ。

することと、そのの代わりにを決めることは違う。

守りたいという気持ちと、何も説しないことも同じではない。

そのことを父は、へ帰れなくなってからったのかもしれない。

学の教材を鞄へ入れ、玄関をた。

父が届けられなかった黄は、朝のを受けて静かにき始めていた。

20格祝いをやり直すためではない。

これから自分で選び続けるの、最初のを迎えるために。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: