"消印は失踪の3日後" 第1話
19961118、岐阜県部のあいにある峰町では、昼を過ぎたころからたいがり始めていた。6000ほどのさな町で、になればいに閉ざされる。町のを流れる川の両側には古い商と宅が並び、の奥にはさな集落が点していた。
午140分、峰郵便局に勤める沢真紀は、赤い郵便バイクで午の配達へた。の具を制のにね、局員たちに「暗くなるに戻ります」と声をかけている。
その、真紀が担当する予定だったのは町の側にある部だった。通常なら午4半までには局へ戻るはずだったが、5になっても姿を見せなかった。
携帯話がまだ広く普及していなかった代で、配達員と連絡を取る段は限られていた。局員が配達先へ順番に話をかけると、午2半まではいつもどおり郵便物を届けていたことが分かった。
しかし、それ以に真紀を見た者はいなかった。
夕方612分、町れにある旧栃バスのそばで、真紀の郵便バイクが発見された。廃止されてから7がたつ造の待所で、周囲に民はなく、に濡れたが川沿いに続いていた。
エンジンは止まっていたが、鍵は差し込まれたままだった。燃料も残っており、故障した形跡はなかった。
部の郵便箱には17通の普通郵便と2通の留が残されていた。
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真紀の鞄や財布はなく、ヘルメットはバイクのハンドルに掛けられていた。
翌朝、バスから約600メートルれた原で、紺の制が見つかった。川へりる斜面には女性用の靴跡が残され、でぬかるんだには滑ったような跡もあった。
警察と消防は、真紀が斜面から川へ転落した能性を考えた。川はからので増しており、流のダムまで範囲を広げて捜索したが、がかりは見つからなかった。
真紀の夫、沢信吾は、当の朝に交わした会話について警察から何度も尋ねられた。
「妻は、疲れていたといます」
当36歳だった信吾は、テレビカメラのでうつむきながら答えた。町内の運送会社で働き、真紀とのには8歳になる息子がいた。
「ここ1かくらい、よく眠れないと言っていました。仕事で何か気になることがあったようですが、詳しくは話してくれませんでした」
真紀は失踪の4、夕の途で箸を置き、夫にこう言ったという。
「この町では、くなったにもが届くの」
信吾がを尋ねても、真紀は「仕事の話だから」と答えなかった。自宅のごみ箱からは、細かく破られた婚届も見つかった。
夫婦関係に問題があった能性が報じられると、信吾は、妻の失踪に関与したのではないかと疑われた。
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しかし真紀が姿を消した、信吾は隣県でわれた会社の研修会に参加していた。
会には30以の同僚がおり、午7まで席をれていない。確な証が成し、警察は事件と事故の両面から捜査を続けた。
それでも、真紀は見つからなかった。
息子の拓は、母が最にをた朝のことを覚えていた。真紀は蔵庫から牛乳を取りし、まだ眠そうな息子に温めてくれた。
「帰りに、図で使うを買ってきて」
拓が頼むと、真紀は黄い付箋に「」とき、制の胸ポケットへ入れた。
「青と緑がいやつでしょ。忘れないよ」
真紀はそう言って、息子の寝癖をで直した。
学から戻った拓は、母が失踪したことをまだらなかった。には叔母が待っており、「お母さんは仕事で遅くなる」と説された。
本当のことを聞かされたのは、翌の朝だった。
父は母が川へ落ちたかもしれないと言った。しかし拓は、母が川にづくとはえなかった。
真紀は幼いころに難事故を目撃して以来、川を怖がっていた。族でかけても原へはりず、を渡るときでさえ無識にの央側を歩いた。
そのことを警察へ話しても、たちは子どもの印象として記録しただけだった。
数か、捜索は縮された。町では、真紀が庭を捨てて逃げたという噂まで流れ始めた。
信吾は再婚せず、拓をで育てた。朝くから弁当を作り、学事にもできる限り顔をしたが、母について語ることはほとんどなかった。