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"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第26話

ずっとここにいるからね」

私が子供のように泣きじゃくるのを見て、久美子は困ったように微笑んだ。

そして私のを、い力で優しく握り返してくれたのだ。

そのさな温もりは、3000万円という虚栄にまみれたよりも、ずっと確かなものだった。

私はこの、自分のをようやく取り戻せたのだと、はっきりとじた。

それから半が過ぎた。

季節は巡り、たいが終わって穏やかなが吹く頃。

私と孝之の婚は、すでに正式に成していた。

あの祝宴の翌、私は宣言通りに弁護士をてて話しいをめた。

孝之は最初、何度か私に話をかけてきた。

けれど私はず、全ての続きを弁護士に任せた。

会社での格がバレて親族からも絶縁された孝之には、もう裁判を戦う気力もおも残っていなかった。

弁護士事務所の無質な机ので、私は何枚かの類にサインをした。

そこには鳴りいも、ドラマのような劇な展もなかった。

ただ淡々と法律に則って、2の財産と戸籍が分けられていくだけだ。

慰謝料は期待していなかったが、私の元にある老は1円も渡さずに守り抜くことができた。

26の結婚活の終わりは、ハンコつ押すだけで信じられないほど静かに完したのだ。

久美子の術の経過は、とても順調だった。

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最初は子だったが、今では杖をついてくを散歩できるまで回復している。

私はパートの仕事をし増やし、実で久美子と2で穏やかな毎を送っていた。

誰かの顔を伺う必のない活は、驚くほど静かで平だった。

方、良枝はあのの言葉通り、本当に実と建物を売却した。

古いけれど広かった本は取り壊され、今はしい分譲宅の事が始まっている。

良枝はその売却で、孝之が祝宴で作った借を全て清算した。

そして残ったわずかなおで、にある古くてさなアパートを借りたのだ。

「私にも責任があるから、これであの子の清算をするわ」

良枝が弁護士を通じて私に伝えてきた最言だった。

それ以来、良枝とも孝之とも連絡を取ることはなかった。

このまま会うこともないだろうとっていたけれど、あるの午のことだ。

私の元に通の郵便物が届いた。

それは私宛ての古い保険の類だったが、違いで良枝のしいアパートに配達されてしまったようだった。

良枝がわざわざしい封筒に入れて転送してくれたのだ。

には「違えて届いたので送ります。お元気で」といういメモが添えられていた。

私はその文字を見てしだけ考えた。

そして休の午、良枝のアパートへ向くことにしたのだ。

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類のお礼を伝えると同に、私のの過に完全な区切りをつけるためだった。

良枝のアパートは、駅からバスで20分ほどれた静かなにあった。

築30は経っていそうな、階段がし錆びたさな建物だ。

孝之が自していたあの豪華なホテルとはまるで違う世界だった。

階段の踊りには子供のが置かれ、どこからか夕飯の匂いが漂ってくる。

私は2階にがり、番奥の部のインターホンを押した。

しばらくして、ドアがゆっくりといた。

「はい……あら、直子さん」

エプロン姿の良枝が、驚いたように目を丸くした。

化粧もせず髪には髪が目っていたが、その表はとても穏やかだった。

類を転送していただいて、ありがとうございました。そのお礼を伝えたくて」

私がげてさな菓子の折りを渡すと、良枝は申し訳なさそうに受け取った。

「ごめんなさいね。こんな散らかったところだけど……」

良枝がしだけ笑った、まさにそのだった。

良枝のろの狭い廊から、1の男性が歩いてきた。

青い作業着を着た孝之だった。

にはゴミ袋が握られている。

孝之は私を見るとビクッと肩を震わせ、そのち止まった。

彼の顔はひどく焼けして、すっかり痩せこけていた。

かつて級スーツを着て親戚ので自話をしていた男の面は、どこにもない。

彼のはあかぎれができ、爪の先には黒い汚れがこびりついていた。

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