"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第22話
俺は母さんの見栄の犠牲者なんだよ!」
居に再びい沈黙が落ちた。
親族たちが孝之のあまりの言いに言葉を失っている。
自分の非をどうしても認められない彼は、最には自分が番切にしていたはずの母親すらも、自分を守るための盾にしようとしたのだ。
良枝は孝之のその言葉を微だにせず、正面から受け止めた。
しむこともることもなく、ただ静かな瞳でにいつくばる息子を見つめ返している。
「そうね。あなたの言う通りかもしれないわ」
良枝のからた言葉は予期せぬものだった。
私は玄関に向かおうとしていたを止め、振り返った。
良枝の顔にはもう迷いはなかった。
彼女は息子が放った刃を避けることなく、あえて自分自の胸にく突きてる覚悟を決めていたのだ。
「私が、見栄の犠牲者……」
良枝はさく笑った。
それはひどく自嘲な響きを持っていた。
「その通りよ、孝之。本当の見栄は誰のものだったのか、それを今から、はっきりさせましょう」
良枝はそう言うと、着ていたのカーディガンのポケットから1枚のを取りした。
それは綺麗に折り畳まれた、役所の正式な類だった。
その類の端に見えた文字に、孝之の顔が再びのように青ざめたのだ。
良枝のので綺麗に折り畳まれたが、カサリと乾いた音をててかれた。
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それは役所の窓で発される、見慣れた緑の用だった。
親族たちの線が斉に、その1枚のに注がれる。
孝之は畳にいつくばったまま息をみ、そのを見つめた。
「俺は今朝番で役所にって取ってきたわ。私の印鑑登録証よ」
良枝の静かな声が、居に響いた。
孝之の顔に困惑のが浮かんだ。
印鑑登録証。
それはきな契約や産の売買などをうにだけ必になる、極めてな類だ。
「母さん、そんなものを取ってきてどうするつもりなんだ?」
孝之の震える声に、良枝は微だにせず答えた。
「先ほど、昔から付きいのある産さんに連絡を入れたわ。このを、ごと全て売却する続きをめてもらうためよ」
その言は、部にいた全員にとって信じられないものだった。
孝之があんなにも誇らしげにリフォームを自し、男としての権力の象徴としていた本の。
それを良枝自ので放すというのだ。
「な、何を言っているんだ!?」
孝之はが忘れ叫んだ。
「このは俺たち族の象徴だぞ!それを売るなんて絶対に許さない!」
彼は自分に残された最の居所まで奪われると気づき、顔を真っ赤にしてちがろうとした。
しかし良枝は、歩も引かなかった。
「族の象徴?違うわね」
良枝のややかな目が、孝之を射抜いた。
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「このは、あなたの腐り切った見栄の象徴よ。だからこそ、私ので完全に終わらせるの」
良枝は元の証をしっかりと握りしめた。
「あなたは先ほど、自分は私の見栄の犠牲者だと言ったわね」
「ええ、その通りかもしれないわ」
良枝の言葉に、孝之はしだけ希望を持ったような顔をした。
母親が自分の非を認めて、助け舟をしてくれたのだとまだ勘違いしていたのだ。
しかし、良枝のから紡がれたのは、最も残酷で最も正しい宣告だった。
「私は確かに、見栄っ張りな母親だったわ。親戚たちから孝之は派な息子だと褒められるのが嬉しかった。あなたが無茶なおの使い方をしていても、いい気分に酔って見て見ぬふりをしたのよ」
良枝は自分の愚かさを隠そうとはしなかった。
親族たちので、自分自の罪をはっきりと認めたのだ。
「けれどね、孝之。私はどれだけ見栄を張っても、の命を踏み台にしてまで祝われたいとったことは1度もないのよ」
良枝の声がく震え始めた。
「あなたは自分が格した恥を隠すために、3000万円という巨な嘘の台を作りげた。その台を完璧にするために私を具として使ったのよ」
孝之の顔から、今度こそ完全に血の毛が引いた。
「あなたは私のために親孝をしたんじゃないわ。親孝な自分に酔いしれるために私を利用しただけ。
そして最には、久美子さんの命すらも自分の見栄を保つための財布として使おうとした」