"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第19話
私はその声を聞いても、しも揺しなかった。
孝之は自分が格したことも、久美子の命をに変えようとした恐ろしい計画も隠したまま、叔父を方につけたのだ。
「わかりました。すぐに向かいます」
私はく答え、話を切った。
逃げる理由など1つもない。
私は戸締まりを確認し、たい朝の空気が残るへた。
タクシーを拾い、良枝のへ向かうよう運転に告げる。
窓のでは、朝のがをるく照らし始めていた。
通勤に向かう々の穏やかな常の景が通り過ぎていく。
私のは、その景と同じように静まり返っていた。
良枝ののい引き戸をけると、え切った空気が玄関に漂っていた。
奥の広い居に入ると、すでに数の親族が集まっていた。
座には叔父が腕を組んで座り、その横にはひどく目の充血した孝之が座っている。
良枝の姿もあったが、彼女は部の番隅に座ったまま、孝之の方を切見ようとしなかった。
私が部に入ると、孝之は急に姿勢を正し、気な態度を取り繕った。
「よく逃げずに来たな。おが勝に座から移した、今すぐ元に戻せ」
孝之の声は威圧だったが、よく聞くと語尾がわずかに震えていた。
叔父がく咳払いをして、をいた。
「直子さん、孝之もし見栄を張りすぎたが、彼は派な部だ。
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しの借なら、働きながらすぐに返せる」
叔父は私を無な妻として諭すように言った。
「りない分は、からに融資を受けるはずになっているそうだ。ただ、担保がしりないらしい。おの母親のを担保として提供しなさい」
その言葉を聞いて、私はの底からたいため息をついた。
孝之は本当に昨夜の話の通り、久美子のを自分の借の具にしようとしていたのだ。
「お母さんは今、集治療にいるんだろう」
孝之が殊勝な声を作って言った。
「は当分空きになる。俺がで必ず取り戻してやるから、今は俺の顔をてるために協力してくれ。男としての面子があるんだ」
私はバッグのの格通にそっと触れた。
これをこので見せれば、彼の「派な部」という嘘は瞬で崩れる。
私がをきかけた、まさにその瞬だった。
静まり返った居に、子音がけたたましく鳴り響いた。
テーブルのに置かれていた孝之のスマートフォンだ。
画面には、元の信用庫の融資担当者の名が表示されていた。
孝之の顔に、パッとるいが戻った。
まるで獄に垂らされた蜘蛛の糸を見つけたような表だった。
「おじさん、融資の担当者からです。きっと審査が通ったという連絡ですよ」
彼は自分の信用を証しようと必だった。
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「直子、よく聞け。俺にはこれだけの社会信用があるんだ。おが配するようなことは何もない」
孝之はわざと全員に聞こえるように、スマートフォンのスピーカー能をオンにして通話ボタンを押した。
「はい、森川です。朝くからお世話になっております」
孝之が自信に満ちた声で答えると、話の向こうからたく事務な声が響いた。
「森川孝之様ですね。お申し込みいただいていた3000万円の融資の件でご連絡いたしました」
「はい。それで、続きはいつからになりますか?」
孝之は親族たちを見回しながら得げに聞いた。
「結論から申しげますと、今回の融資は完全にお断りさせていただきます」
担当者の声が、居の空気を瞬で凍らせた。
孝之の顔から、笑顔が乱暴に引き剥がされた。
「な、なぜですか!?私の収と役職なら、分審査に通るはずだとおっしゃっていたじゃないですか!」
孝之はスマートフォンに向かって声を荒げた。
「森川様、私どもは最終確認のために、ご勤務先の会社へ籍確認をいました」
スピーカーから流れる声は、容赦のない事実を突きつけた。
「会社の事部から、森川様が3ヶに管理職を解任され、幅な減処分を受けているという回答を得ました」
叔父が信じられないという顔で孝之を見た。
孝之のが、パクパクと魚のように閉を繰り返している。
「あなたが提された与細は、格のものを偽造した疑いがあります。