"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第16話
彼は者からの賞賛という麻薬に完全に依していたのだ。
結婚してから今までの26が、まるでパズルのピースが埋まるように1つの恐ろしい絵を完成させていった。
孝之は昔から、ではが良く気のいい男だった。
親戚の集まりがあれば誰よりもいお酒を持参し、部の結婚式には分いご祝儀を包む。
私はそれを彼の優しさだとっていた。
けれど計簿の赤字に私がため息をつくと、彼はいつも嫌にドアを閉めていたのだ。
彼にとっての優しさとは、誰かに見られ、評価される所でしか発揮されないものだったのだ。
親戚からの評価、雑誌での賞賛。
それらを集めて自分を飾りてるためには、どんな犠牲も厭わない。
私の母の命すらも、彼にとっては自分の台のを妨げる邪魔なノイズでしかなかったのだ。
「私はずっと、あの子が私のためにしてくれているのだと、自分に言い聞かせていたの」
良枝の目から、筋の涙がこぼれ落ちた。
「でも、あなたが病院へったとって、あの雑誌の記事を見た、はっきりと分かったわ。あの子は私を飾りのように使って、自分の見栄を満たしていただけなんだって」
それは母親にとって、どれほど残酷な気づきだっただろうか。
自分がし、頼りにしていた息子が、実は自分のことを親孝を演するための便利な具としか見ていなかった。
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その事実に直面した、良枝は激しいりよりも先に、い絶望をじたはずだ。
だからこそ良枝は、あの華やかな宴会でのちゃんちゃんこを脱ぎ捨てたのだ。
自分から具の役をりることで、息子の狂った台を完全に終わらせるために。
「お義母さん……」
私がかける言葉を探していると、良枝は涙を乱暴に拭い、まっすぐに私を見つめた。
「直子さん、あなたが話にないから、あの子、私のところに何度も泣きついてきたわ」
良枝の調がしだけくなった。
「『座のおがなくて、ホテルの追加料が払えない。雑誌の記者に渡すおがない』って、話で喚いていたの」
私は孝之が私に「婚だ」と脅しをかけてきた直のことを像した。
私に拒絶された彼は、結局番の方であるはずの良枝にすがりつくしかなかったのだ。
「私は1円もさないと突き放したわ。自分の見栄でかいた恥は、自分で払いなさいって」
良枝のその言葉には、母親としての静かな、けれど絶対な決が込められていた。
私たちは言葉を交わすことなく、お互いの目を見つめった。
これまで嫁と姑として、どこか見えない壁を隔てて付きってきた私たち。
けれど今、このたい病院の廊で、私たちは初めて同じ方向を見ていた。
孝之という1の男の、見栄と虚構で塗り固められた正体をはっきりと共したのだ。
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「でもね、直子さん」
良枝の声が、ふっと段くなった。
「私が昨の夜、本当に恐ろしいとったのは、あの子の祝宴での姿でも、雑誌の裏のことでもないの」
良枝は周囲を気にするように、しだけ声を落とした。
「私がホテルの部に戻る直、祝宴の裏の暗い廊で、あの子が誰にどんな話をかけていたか。それを聞いてしまったから、私はあの子を完全に見限ったのよ」
私は良枝の言葉に息をんだ。
孝之はあの狂騒の裏で、私と良枝に隠して、さらに別の恐ろしい本音を吐きしていたというのだ。
病院の窓から差し込む朝のが、良枝の青ざめた顔を静かに照らししていた。
病院の窓から差し込む朝のが、良枝の青ざめた顔を静かに照らししていた。
私は息を止めるようにして、良枝の次の言葉を待った。
「昨の夜、あなたが病院へ向かったのことよ」
良枝は乾いた唇をしだけ舐めて、ゆっくりと語り始めた。
「宴会では親戚たちが次々と孝之にお酒を注いでいたわ。みんながあの子を褒めて、私も最初は悪い気はしていなかったの」
良枝の目が、痛みを堪えるように細められた。
「でも、あまりにもあの子が自分のおの話ばかりするから、し息苦しくなってね。私はに当たりたくて、そっと部を抜けしたのよ」
ホテルの廊は、宴会の喧騒が嘘のように静まり返っていたそうだ。