"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第13話
「こんなお祝い、私はしも嬉しくない」
良枝はそれだけ言い残し、親戚たちのをに通り過ぎて宴会をていった。
主役がいなくなった豪華な部には、3000万円の虚栄の残骸と、呆然とち尽くす孝之だけが残された。
「それから、どうなったとう?」
話の向こうで義妹が疲れ切った声で言った。
「親戚たち、蜘蛛の子を散らすように帰り支度を始めたのよ。孝之の見栄のために、の親の命を軽んじていた席になんて、誰もいたくないじゃない」
「孝之さんは、どうしているの?」
私が静かに尋ねると、義妹はさくため息をついた。
「誰もいなくなった宴会で、1でお酒をんでいるわ。ホテルのも困り果てているみたい。私はもう見損なったから、先に帰ってきたの」
義妹は沈痛な声をした。
「お義姉さん、本当にごめんなさいね」
義妹はそう言って話を切った。
「ツーツー」という無質な音が、夜の廊にさく響いた。
私はスマートフォンを膝のに置き、く息を吐きした。
孝之の完璧な台は、彼が番方だと信じていた良枝のによって見事に打ち砕かれたのだ。
親孝という名目の裏に隠された、自分への異常な執着。
それに気づいた良枝は、息子をかばうことよりも、としての正しいりを選んだ。
私は良枝に対して、しだけ堵のようなものをじていた。
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良枝も見栄っ張りなところはあるが、決して命を軽するようなではなかったからだ。
それにしても、孝之からの着信は度もない。
自分のプライドが々に砕け散ったことでがいっぱいで、妻の親の術がどうなったかなど気にする余裕もないのだろう。
私はそんな夫に、れにう気持ちすら湧いてこなかった。
ただもう、私たちの関係は完全に元の所には戻れないところまで来てしまったのだという確信があるだけだった。
計の針は、夜の11を回っていた。
今はもう誰も、この静かなを邪魔することはできない。
久美子の回復を祈りながら、朝までここで待とう。
そうって目を閉じたのことだ。
膝ののスマートフォンが再びく震えた。
今度はメッセージではなく、話の着信である。
画面を見ると、そこに孝之の名が表示されていた。
全てを失い、1ぼっちになった宴会から、ついに彼が話をかけてきたのだ。
私は画面を見つめたまま、通話ボタンを押すべきか迷った。
しかし、彼が何を言うつもりなのか、私は自分ので確かめる必があった。
緑のボタンをスライドさせ、元に押し当てる。
「もしもし」
私が静かに声をかけた瞬、話の向こうから聞こえてきたのは、謝罪の言葉でも、私を責める言葉でもなかった。
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それは私が予もしていなかった、ひどく狼狽えた声だったのだ。
「おい、どういうことだ!?予備の座にあったが、全部消えているじゃないか!」
話の向こうから響いたのは、孝之の焦り切った鳴り声だった。
謝罪でもなく、私の母である久美子の容態を配する言葉でもない。
彼は番に、私が自分名義の座に移したおのことだけを責めててきたのだ。
宴会に取り残された彼は、誰もいなくなった部の追加の代や、ホテルの延料を払おうとしたのだろう。
あるいは、あの雑誌の記者に約束していた裏の支払いを求められたのかもしれない。
持ちの現や自分のカードの利用枠がりず、彼がいつも当てにしている夫婦の共座から支払おうとして。
残がゼロになっていることに気づいたのだ。
「あのおは、母の入院費と、私自の今の活を守るためのものです」
私がひどく静かな声で答えると、孝之はで笑うような声をした。
「ふざけるな!俺に恥をかかせる気か!」
彼はパニックになりながらも、まだ自分が私を完全に支配していると信じていた。
「母さんがって帰っちまったんだぞ!おが変なタイミングで病院にくからだ!」
全てを私のせいにしようとするその言葉に、私は議なほど静だった。
自分が親戚ので嘘をついたことも、久美子の命を軽んじたことも、彼のでは完全に棚げされているのだ。