"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第12話
「今夜から数は、集治療で絶対静が必です。ですが、番危険な峠は越えました」
医師は静かな声で、確かな事実を伝えてくれた。
私はくをげた。
「ありがとうございます……」
その言葉はかすれて、うまく音にならなかった。
目がくなったが、涙はこぼれなかった。
泣いている暇などないのだと、自分に言い聞かせていたからだ。
しばらくして、ストレッチャーに乗せられた久美子が運ばれてきた。
顔は青く、元には酸素マスクが当てられている。
腕には何本もの点滴の管が繋がれていた。
それでも、い毛布ののさな胸は、確かにゆっくりとにいていた。
「お母さん……」
私がさな声で呼びかけてを握ると、久美子の指先が微かにいたような気がした。
温かいだった。
孝之が「でいい」と切り捨てようとした母の命は、今しっかりとここにしている。
私はその温もりを両で包み込むように握りしめ、集治療へ向かうストレッチャーを最まで見送った。
母の姿が見えなくなった、私は廊の自販売で温かいお茶を買った。
夜の病院は、ひどく静まり返っている。
子に座り、お茶の入ったコップでえた指先を温めていると、バッグののスマートフォンが震え始めた。
画面には、孝之の妹である義妹からの着信が表示されていた。
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私はさく呼吸をしてから、通話ボタンを押した。
「お義姉さん、夜遅くにごめんなさい。久美子さんの術、どうだった?」
話の向こうの義妹の声は、ひどく緊張しているようだった。
「無事に終わったわ。今、集治療に入ったところよ」
私がそう答えると、義妹は「良かった……本当に良かった」と底ほっとしたようなため息をついた。
しかしその直、義妹の声のトーンがすっとくなった。
「お義姉さん、実は今、こっちは変なことになっているの」
私はコップを子の横に置き、スマートフォンを持ち直した。
「お義母さん、っているの?」
私が尋ねると、義妹は声を潜めた。
「るなんてもんじゃないわ。修羅よ」
義妹は、ホテルの宴会で起きた来事を語り始めた。
私がホテルをた、宴会では私の空席がしずつ目ち始めていたそうだ。
親戚の1が「直子さんはどうしたの?」と尋ねると、孝之は平然と嘘をついた。
「ひどい痛がするって言うから、先に帰らせたんですよ。せっかくの席にを差してすみませんね」
その言葉に親戚たちは同し、宴会はそのままやかにんでいくはずだった。
孝之は雑誌の記者を引き連れて各テーブルを回り、見栄に満ちた自話を続けていたそうだ。
しかし、その完璧な空気は、良枝が宴会に戻ってきた瞬に凍りついた。
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「お義母さんの顔は、誰も見たことがないほど青ざめて、りに震えていたわ」
には、私が送ったスクリーンショットが表示されたスマートフォンが握られていた。
良枝は親戚たちには目もくれず、孝之の真正面にち塞がった。
「母さん、どうしたんだ?もっと料理を楽しんでくれよ」
酔って嫌な孝之がそう声をかけた瞬、良枝は元のスマートフォンを孝之の胸元にく突きつけた。
「直子さんは、久美子さんの緊急術に付き添っているそうね」
その言が、静まり返った宴会に響き渡った。
親戚たちのざわめきが、ぴたりと止まった。
記者のカメラも、自然な空気を察してろされたそうだ。
「痛で帰らせたって、よくもそんな嘘がつけたわね。の親の命が危ないに、あなたはどうしてあの子を無理に引き止めようとしたの?」
良枝の声は、鳴り声ではなかった。
ひどくく、たく、の底からの軽蔑が込められていたという。
「それに、この雑誌の記事は何?私の古希祝いは、あなたの会社を宣伝するための具だったの」
孝之の顔から、完全に血の毛が引いた。
彼は慌てて周囲の目を気にしながら、良枝をなだめようとしたそうだ。
「違うんだ、母さん。これは会社のためでもあるし、母さんにんでもらうためで……」
「言い訳は聞きたくないわ」
良枝のたい言が、孝之の言葉を断ち切った。
そして良枝は、着ていたのちゃんちゃんこをそので脱ぎ捨てて、くの子に投げつけたのだ。