"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第11話
あの決断に至るまでの数分、私は確かにあの部の狂気に触れていた。
ホテルの宴会に戻るのことだ。
控でのたい言に傷ついた私は、しでもを落ち着かせようと、1で宴会に先に入っていた。
円卓には豪華な装が飾られ、グラスが美しく並べられている。
次々と親戚たちが入ってきて、会は華やかな気に包まれていった。
良枝は特別なのちゃんちゃんこを羽織らされ、し照れ臭そうに、けれど嬉しそうに笑っていた。
その横で、孝之はマイクをく握り、声で挨拶を始めた。
「本は母、良枝のためにこんなにもくの方々にお集まりいただき、男として無量です」
孝之の声は、宴会の隅々にまで響き渡った。
彼は今回の宴席の豪華さ、これから予定している実のリフォーム、そしての購入について、自げに語り始めた。
「これも全て、苦労して私を育ててくれた母へのささやかな恩返しです」
彼は胸を張り、マイクを握るに力を込めた。
「総額3000万円など、母のに比べればいものです」
その言葉に、親戚たちから「おおっ」というどよめきと、きな拍が湧き起こった。
良枝はハンカチで目を抑えるふりをしながら、満そうに頷いている。
あの雑誌の記者は、その様子を最列でにカメラに収めていた。
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まるで完璧な族のなドラマが、見事に演じられているかのようだった。
私は自分の席から、その景をじっと見つめていた。
私の横の席は、孝之が座るはずの空席だ。
彼は挨拶を終えると、親戚たちにお酒を注がれながら、嫌で会を回り始めた。
誰もが孝之を褒め称える。誰もが良枝を祝福する。
その完璧な幸福の空に、久美子の命の危という「病気の匂い」は見事に排除されていた。
私はテーブルので、自分のをく握りしめた。
私の母は今、たいベッドので命の危険と戦っている。
それなのに、私の夫は母親に3000万円を使ったことを自し、賞賛を浴びることに完全に酔いしれている。
この温度差は、もう言葉で埋められるものではなかった。
孝之が酒に顔を赤くして私の席に戻ってきた、私は病院から久美子の術がまるかもしれないという連絡を受けた直だった。
私は彼に、病院へ向かいたいと伝えた。
そして、あのたい言葉が返ってきたのだ。
「おの母親の術はまだ先でいい」
孝之の目は私ではなく、自分を賞賛してくれる親戚たちの方を向いていた。
彼は自分の完璧な台に傷がつくことだけを恐れていたのだ。
私はその横顔を見つめたまま、を閉ざした。
彼を鳴りつけることも、泣き叫ぶことも、証拠を突きつけることもしなかった。
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ただ、司会者の「乾杯」という声にわせてちがり、グラスを持たずに静かに拍をしたのだ。
パチ、パチ、と。
それは、孝之の見栄と虚栄に対する、私からの最の祝福だった。
そして私は、誰も私を止めることのないまま、静かに宴会の扉をけててきたのだ。
病院の廊で、私はスマートフォンの画面を再び見つめた。
良枝からの呼びし。
それは、あの狂った空に私を再び引きずり込もうとするのようにもじられた。
私は打ちかけていた返信を全て消した。
そしてく、言だけ打ち込んだ。
『久美子の術が終わるまで、私はここをきません』
送信ボタンを押した瞬、私の目ので術のの赤いランプが、ふっと消えた。
い扉がゆっくりとき、疲れ切った表の担当医がてきた。
私はスマートフォンをバッグにしまい、無識のうちに祈るように両を組みわせた。
術のの赤いランプがふっと消えた。
い扉がゆっくりとき、疲れ切った表の担当医がてきた。
私はスマートフォンをバッグにしまい、無識のうちに祈るように両を組みわせた。
「術は無事に終わりましたよ」
マスクをした医師のからたその言に、私はの力が抜けそうになった。
私は壁にをついて、必に体を支えた。
「ただ、ご齢ということもあり、処置は予定よりも難しいものになりました」
医師はカルテを見つめながら言葉を続けた。