みかん小説
本棚

"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第8話

「母の容態が急変して、今夜からの朝にかけて術をすると……」

「聞いていないわよ!」

良枝の声が、ひっくり返るように急にきくなった。

「孝之はさっき、親戚のみんなにこう言っていたのよ」

良枝は息を荒くして言葉を続けた。

「『直子はひどい痛でどうしても座っていられないから、先に帰らせた』って」

その言葉を聞いて、私はたい子ので、まるで氷を浴びたような覚に陥った。

孝之は私が病院へ向かったことを隠しただけではない。

私が体調良で帰ったという都の良い嘘の物語を、あの勢の親戚ので堂々と作りげていたのだ。

「それに、久美子さんの術のことも……」

良枝の声が、かすかに震え始めていた。

「あの子、数に私に1枚のを見せたのよ」

良枝は言葉を絞りすように言った。

「久美子さんの検査結果がとても良くて、術は来まで延期になったって。だから今のお祝いも、からんで参加できるって。そう言っていたのよ」

私はその「1枚の」の正体に、すぐにい当たった。

1ヶ、久美子の容態が定したの、古い診断だ。

私がリビングのテーブルに置いていたそのを、孝之は黙って自分の鞄にしまっていたのだ。

私はてっきり、彼なりに久美子の病状を気にかけて、会社の休みを調するために持っていったのだと信じていた。

広告

けれど違ったのだ。

孝之は自分の完璧な古希祝いの計画に傷をつけないため、その古い診断を良枝に見せていたのだ。

義母への祝宴を優先させるために、妻の親の術を無するたい男と見られないように。

全てが順調で、誰も幸ではない完璧な族を演するために。

孝之は良枝のすらも騙して、あの華やかな宴席の真んに座らせていたのだ。

「あの子……私に嘘をついていたのね」

良枝の絞りすような声が、元に届いた。

「自分の妻の親が命の危にいるのに、あの子は笑ってお酒をんでいるの?……私の古希祝いのために?」

良枝は見栄っ張りなところはあるが、の命を踏み台にしてまで祝われたいと願うようなではない。

彼女の誇りさは、そういう種類の残酷さとは無縁のものだった。

「お義母さん、申し訳ありません」

私は静かに謝罪をにした。

「せっかくの素らしいお席を、私ので台無しにしてしまって」

私がそう言うと、良枝は調でそれを遮った。

「あなたが謝ることじゃないわ」

良枝の息遣いが、話越しに荒くなっているのが分かった。

「久美子さんのそばにいてあげなさい。1いをさせてはいけないわ」

良枝の声には、はっきりとした決がこもっていた。

「孝之のことは、私に任せなさい」

話が切られた。

広告

「ツーツー」という無質な音が、私のに残った。

良枝がこれからあの宴会で何をするつもりなのか、私には分からない。

けれど私には今、孝之の嘘よりも優先して直しなければならない現実があった。

私は子に座り直し、スマートフォンの画面を操作した。

久美子の術が無事に終わった、集治療の費用や入院費をすぐに支払う必がある。

私は活費を管理しているのアプリをき、夫婦の共座の残を確認した。

画面に表示された数字を見て、私は瞬自分の目を疑った。

「え……?」

が、私が最に確認したよりも、100万円く減っていたのだ。

ホテルの宴会費用やリフォーム代は、すでに別の座から引き落とされるはずになっていたはずだ。

この共座は、いざというのための緊急予備費として、私が絶対にをつけずに守ってきたおである。

私は慌てて、孝之と共しているクラウドの計簿フォルダーをいた。

そこには、彼が古希祝いのために集めた様々な請求のデータが保されている。

私は震える指先を滑らせて、最追加されたファイルを探した。

見慣れない名のフォルダーが1つ、しく追加されていた。

フォルダー名は「広報費」とかれている。

タップしてくと、そこには元の経済報誌を発している版社の企画と、額な振り込み細のPDFが入っていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: