"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第6話
あの華やかな宴会で、親戚たちに囲まれて嫌だったはずの良枝。
彼女がなぜ、途で席をったというのか。
私は画面を見つめたまま、さく首を傾げた。
祝宴はまだ終わっていないである。
主役である良枝が自ら部へ戻るなど、普段の彼女からは到底考えられないことだった。
良枝は、世体や親戚からの目を誰よりも気にするだからだ。
私はたい子にく背を預け、目を閉じた。
まぶたの裏に、この数ヶ、異常な速さで膨らみ続けてきた親孝の計画が蘇ってきた。
最初は、本当にさな提案だったのだ。
「母さんも古希だし、族だけで美しいものでもべにこう」
リビングでお茶をみながら、孝之は穏やかな顔でそう言った。
そのの孝之の言葉には、私に対する気遣いすら確かにあった。
私の母である久美子の体調が優れないことも、彼はっていたからだ。
だからこそ、良枝のお祝いは無理のない範囲で、静かに済ませる予定だった。
良枝自も、最初は慮がちに笑っていたのだ。
「そんなにおを使わなくていいわよ。気持ちだけで分だから」
彼女は本当に嬉しそうに、そう言っていた。
空気が変わり始めたのは、ある休のことだった。
孝之が親戚の叔父に、古希の相談を持ちかけたからだった。
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叔父は親族のでも番発言力があり、皆が気を使うだ。
「男なんだから、それなりのことはしてやれよ」
叔父は話で、孝之に葉巻を吹かすような調で言った。
「おの親父がくなってから、良枝さんも苦労したんだからな」
その何気ない言が、孝之のにある奇妙な虚栄にをつけてしまったのだ。
ある週末の午、リビングでパソコンに向かっていた孝之が突然振り返った。
「やっぱり、族だけの事じゃ格好がつかないな」
彼はキーボードを叩くを止め、私を見てこう言いした。
「本の連も呼んで、きちんとしたホテルでちゃんとやろう」
私は驚いて彼の元を覗き込んだ。
パソコンの画面には、内で最も格式のいホテルの宴会が映しされていた。
「お義母さんは、族だけで温泉にでもきたいって言っていなかった?」
私がそう尋ねると、孝之は面倒臭そうにを振った。
「母さんはああ言ってるけど、本当は盛に祝ってもらいたいはずだ」
彼は自信満々に胸を張り、言葉を続けた。
「それに、俺が男として何もしないとわれたら、困るだろう」
この、私は最初のさな違を覚えた。
孝之のからる言葉の主語が、「母さん」から「俺」にすり替わっていたからだ。
それからの孝之は、まるで何かに取り憑かれたようだった。
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ホテルの宴会プランは、迷うことなく番いものに変更された。
引き物には、名ブランドの価な器が選ばれた。
さらに、「親戚がに来るかもしれないから」という理由で、実の回りのリフォーム契約まで独断でめてしまったのだ。
「さすがにそれはやりすぎじゃない?私たちの老資にも限りがあるのよ」
私は計簿を見せながら、彼を引き止めようとした。
すると、孝之の態度は氷のようにたくなった。
「俺のだろう」
彼は私のから計簿を奪い取り、テーブルに叩きつけた。
「俺が稼いだで親孝して、何が悪いんだ」
その言葉は、私と孝之のに見えないい壁を作った。
夫婦で緒に築いてきたはずの財産が、彼のでは完全に「自分だけのもの」になっていたのだ。
私は、孝之が夜遅くまで親戚たちに話をかけている声を聞くようになった。
彼は斎のドアをけ放ち、きな声で話していた。
「ええ、し値は張りますが、母のためですから」
彼は笑い声を交えながら、誇らしげに語るのだ。
「リフォームも緒にやろうといましてね。親父の分まで、俺が楽をさせてやらないと」
話越しの孝之の声は、信じられないほど得げだった。
彼は良枝をばせるために計画をてているのではない。
親戚たちから「派な男なんだ」
と賞賛されるために、湯のようにおを使っていたのだ。
良枝は、次々と決まる豪華な計画に、最初は戸惑っていた。
「こんなにしてもらって、なんだか申し訳ないわね」