"頭金300万を1万円にした婚約者の末路" 第7話
袋の半透のビニール越しに見えたのは、私が学の卒業祝に両親から買ってもらったトレンチコートと、事にしていた欧デザインのテーブルウェアの箱だった。
「……何してるの」
私のから、乾いたい声が漏れた。
リビングの奥から、エプロン姿の女がひょっこりと顔をした。 佐伯登紀子だった。 額にっすらと汗を浮かべ、には黄いゴム袋をはめている。
「あら、咲良さん? 随分とかったのね。まだ半よ? 会社はどうしたの?」
登紀子は、まるで自分の実で掃除のに息子の帰りを迎える母親のような、屈託のない笑顔を浮かべた。 そのには、私が集めていたレシピ本や説が数冊、無造作に掴まれていた。
「……あなた、ここで何をしているの」 私は靴を脱ぐのも忘れ、玄関のがり框に踏み込んだ。 「なんで私の部に入っているの? その鍵は誰からに入れたの!?」
「きな声をしちゃダメよ、ご所迷惑でしょうが」 登紀子は眉を顰め、に持っていた本を元のゴミ袋へポイと放り込んだ。鈍い音が私の鼓膜を叩く。
「悠馬から預かったのよ。あの子が鍵を作って持たせてくれたの。『母さん、咲良は仕事が忙しくて片付けがだから、同居の準備を伝ってやってくれ』ってね。母親が息子のまいの片付けを伝いに来て、何が悪いの?」
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「ここは私の名義の賃貸マンションよ! 悠馬のじゃない! 私のおを払って借りている部よ!」
「結婚するんだから同じことでしょう!」 登紀子は平然と言い放ち、ゴム袋をパンと鳴らした。 「見てごらんなさい、この狭い部に溢れかえった無駄なものの! ブランドでもない物のに、使えもしない趣の器! 階の畳にこれ全部持ってくるつもりだったの? 入るわけないでしょうが。だから私が親切で、いらないものを仕分けて処分してあげてるんじゃないの。謝されても文句を言われる筋いはないわよ」
部を見渡すと、私のクローゼットはすでにけ放たれ、ハンガーにかかっていたの半分以がに引きずりされていた。 ベッドのには、私が仕事で使う資料や企画ノートが乱雑に積みげられている。 プライベートの聖域であるはずの部が、で踏み荒らされたように汚されていた。
「触るな……!」 私は登紀子の腕を掴もうとした。 「私のものに指本触れるな! 今すぐ警察を呼ぶわよ! 居侵入と器物損壊よ!」
「警察!? 恩を仇で返すとはこのことね!」 登紀子は私のを払いのけ、げさに胸を押さえて退りした。 「私がわざわざ埼玉からい腰をげて、を乗り継いで、あなたたちの活のために掃除に来てあげたのよ!? それを犯罪者扱いするなんて……なんて底の悪い娘なの! 悠馬! 悠馬、く来なさい!」
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登紀子がリビングに向かって叫んだ瞬、奥の寝のドアがき、スウェット姿の悠馬が現れた。 彼はにワイヤレスイヤホンをつけたまま、気まずそうに目を泳がせた。
会社を休んで、ここにいたのだ。 私の留守を狙って、母親を招き入れ、私の荷物を処分させていたのだ。
「……悠馬」 私の声は、もはや震えてすらいなかった。氷点の気が、肺の奥からせりがってくる。 「あなた、体調良で休んだんじゃないわよね。務に私の名を偽造してして、解体事を始めさせて……今度は母親を使って、私の私物を捨てさせているの?」
悠馬は瞬、怯えたように線を逸らしたが、すぐに居直ったようなたい目を向けた。
「咲良、務に話したのかよ……。余計なことするなって言っただろ。俺が全部うまく収めるって」
「うまく収める? 私の百万円をドブに捨てさせて、偽造の同をして、私の持ち物をゴミ袋に詰めることが『うまく収める』ことなの!?」
「咲良さん、その言い方は何よ!」 登紀子が悠馬の背に隠れながら、甲い声を張りげた。 「悠馬はね、あなたのためをってやってるのよ! 優柔断なあなたがいつまでも実に来る決がつかないから、堀を埋めてあげたんじゃない! だいたい、あの解体事を止めろだなんて、務のにどれだけ迷惑がかかるとってるの!? 佐伯の信用に傷がついたら、あなたが責任取れるの!?」