"頭金300万を1万円にした婚約者の末路" 第6話
といご望をいただきましてね。今朝番で、階リビングの解体事に入ったところですよ』
ので、キーンという属音が鳴り響いた。
「解体……? 事が、始まっているんですか?」
『ええ。本来ならもうし先の程でしたが、お母様が「息子の気が変わらないうちにく始めてちょうだい」と仰いましてね。職の配を繰りげて、今朝から板と壁の撤を始しております。ですから、現点で解約となりますと、すでに発した解体実費と発注済みの資材代、それに規定の違約が差し引かれますので……付の百万円からは、円もお戻しできないどころか、追加のご請求が発する能性がございます』
「待ってください! 私、そんな事に同していません! あの付のうち百万円は私の個資産で、無断で振り込まれたものなんです!」
を抑えきれずに叫んだ私に対し、田は非常に困惑した様子で、しかし事務に答えた。
『桐様、お気持ちは分かりますが……弊社といたしましては、正規の続きを踏んでおります。昨、悠馬様がお母様と緒に支へ来社され、桐様の自署と捺印がなされた【事同兼連帯債務承諾】を提していただいたばかりですよ』
「私の……自署と捺印?」
『はい。「桐咲良」様のお名で、実印相当の印も確認しております。
広告
「婦になる咲良も全面に賛同している」と悠馬様ご本から直接伺い、類を受領いたしました。もしご本様の同がないとおっしゃるなら……それは社内、いえ、ご族でのトラブルということになりますが……』
そこから先の田の声は、ほとんどに入ってこなかった。 悠馬が。 昨晩、プリンを買ってきて涙ぐみながら「俺が悪かった」とをげたあの男が。 昨の昼、母親とを取りって務へき、私の名を偽造した類を提していたのだ。 そして、私の百万円を解約能な状態へ叩き込むために、今朝から実の壁を壊させていた。
「……類の控えを、至急私のメールアドレスに送ってください」 私は震える声で告げ、アドレスを伝えて通話を切った。
分、スマホに届いたPDFファイルをく。 そこには、私の名が、見慣れた悠馬の几帳面な跡でかれていた。捺されていたのは、以、私が悠馬の部に置き忘れていた文判の印だった。
吐き気がした。 りを通り越して、元から世界が崩れ落ちていくような底なしの悪寒。 あの男の「優しさ」は、単なる事なかれ主義ですらなく、母親の敷いたレールを完遂するために婚約者を欺く「偽装作」だったのだ。
私はすぐに悠馬へ話をかけた。 しかし、コール音は空しく鳴り続けるだけで、留守番話に切り替わった。
広告
メッセージを入れても、LINEを送っても、既読すらつかない。
計を見る。午。 とても仕事に集できる精神状態ではなかった。 私は司に「急な庭の事で体調を崩した」と告げて半休を取得し、オフィスをびした。
向かう先は、私名義で契約している杉並区の賃貸マンションだ。 悠馬は週の半分を私の部で過ごしており、彼の私物も置いてある。 奴が帰ってくるのを待ち伏せし、この偽造類を突きつけて警察汰にする覚悟だった。
最寄り駅をり、で宅を抜ける。 のたいが頬を打ったが、体のは黒い炎が燃え盛るようにかった。
マンションのエントランスを抜け、エレベーターで階へがる。 角部の自分の部のにった瞬、私は異変に気づいた。
玄関ドアの鍵穴に、鍵が差し込まれていなかった。 だが、郵便受けの隙から、部ののかりが漏れている。 さらに、ガタゴトと具を引きずるような穏な物音と、何かが擦れうガサガサという音が廊にまで響いていた。
棒――?
臓がねがった。 私はスマホを握りしめ、いつでも110番通報できるように構えながら、ドアノブにをかけた。 鍵は、かかっていなかった。
ゆっくりとドアを引く。 タタキに並んでいたのは、見慣れない派な柄のスリッパと、黒いエナメルの婦靴だった。
そして玄関ホールには、巨な黒いゴミ袋がつ、所狭しと積みげられていた。