"頭金300万を1万円にした婚約者の末路" 第5話
付きい始めた頃、残業で疲れた私によく買ってきてくれたものだ。
「昨はさ、俺も母さんも興奮しすぎちゃって……母さんが取り乱すと、俺、昔からが真っになっちゃうんだよ。父さんがくなってから、母さんを支えなきゃいけないってプレッシャーがずっとあって」 悠馬はソファに浅く腰掛け、両を膝ので固く握りしめた。その瞳には、かつて私をさせてくれた、あの気で優しいが滲んでいた。
「咲良の言う通りだよ。咲良が懸命貯めた百万円を、勝に使うなんて絶対に違ってた。荻のマンションのことも、俺たちで決めた約束だったのに、俺が母親の寂しさに流されちゃったんだ。本当にけない」
その言葉を聞いた瞬、私の胸の奥で、カチコチに凍りついていた何かがわずかに緩んだ。 ――ああ、やっぱり悠馬はわかってくれたのだ。 昨のあの異様な景は、義母のヒステリーに巻き込まれた彼のなパニックだったのだ。積みねてきた彼の誠実さが、嘘だったはずがない。
「わかってくれたならいいの」 私は息をつき、温かいほうじ茶をつ淹れてテーブルに置いた。 「お義母さんが寂しいのは理解できる。でも、私たちの活を壊してまで同居するのは違うとう。あの百万円は、曜に務から戻してもらえるの?」
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「うん、の朝イチで母さんに話して、契約のキャンセルを頼むよ。務にも連絡して、付の返座を咲良の座に指定してもらう。ただ……」 悠馬はしごもり、申し訳なさそうに眉をの字にした。 「母さんもプライドがあるだからさ、俺からうまく言い聞かせるよ。咲良が直接言うと角がつだろ? だから、咲良は母さんと連絡を取らないで、俺に任せてくれないか。曜までには、解約類の控えと返の続きを全部済ませて報告するから」
「……わかった。悠馬を信じる」
その夜、悠馬は私のを握って「信じてくれてありがとう」と呟いた。 ベッドので彼の温もりに触れながら、私は堵していた。嵐はったのだと、これで元の穏やかな結婚準備に戻れるのだと、疑いもしなかった。
だが、その甘い希望は、わずかに々に砕け散ることになる。
曜の昼休み、オフィスの自席で昼をとっていた私は、帳に挟んであった枚のメモに目を留めた。 曜に佐伯の実で見た、あの分いリフォームカタログの表に印字されていたロゴマーク――『都ホーム 越支』の文字と、担当者として名刺がホチキス留めされていた『営業部・田』という名。
悠馬からは「母さんと話している、順調にんでいる」と昨夜LINEが入っていた。
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だが、なぜか胸のざわつきが収まらなかった。 私はオフィス具の営業企画として、頃から数くの務や内装業者とやり取りをしている。リノベーションの付百万円というがいた契約が、話本で、しかも違約も発せずにすんなり解約できるものだろうか。現調査や設計図面の作成までんでいたはずだ。
私は湯へき、スマートフォンのキーパッドを叩いた。 呼びし音が回鳴り、男性の落ち着いた声が返ってきた。
『はい、都ホーム越支の田でございます』
「突然のお話恐れ入ります。佐伯様邸のリフォームの件で確認させていただきたいことがございまして、婚約者の桐咲良と申します」
『ああ! 桐様! お話ありがとうございます。佐伯登紀子様と悠馬様から、お話は伺っておりますよ。素敵なお嬢様だとお母様が変嬉しそうに語っていらっしゃいました』
田という営業マンの声は、やけにるく弾んでいた。 違約やキャンセルの話など、微もじさせないトーンだった。 嫌な予が、胃の底をたく撫でろす。
「あの……田様。現、リフォームの状況はどうなっておりますでしょうか。付の件などで、悠馬から解約のご相談が入っていませんか?」
受話器の向こうで、田がさく息をんだ気配がした。
『え? 解約……ですか? いえいえ、とんでもない! むしろ逆ですよ。昨、お母様から「何が何でも予定通りめてほしい、至急着してくれ」