"頭金300万を1万円にした婚約者の末路" 第2話
であるかのようなれみの目を向けてくる。
「咲良……おの処で『俺の』とか『私の』とか言うの、やめないか? 来には入籍して、つの庭になるんだよ。俺のおも咲良のおも、全部『のもの』になるんじゃないの? それをそんな、銭単位で線引きするなんて……なんか、寂しいよ」
「寂しい!?」 あまりの論点のすり替えに、目眩がした。 「のものになるからって、事に相談もしないで全額持っていくのが当たりなわけないでしょ! あれは荻のマンションのだって、で契約の見までったじゃない!」
「あれは仮の話だっただろ!」 悠馬が初めて、し声を荒らげた。しかしすぐにトーンを落とし、諭すような甘い声に戻る。 「母さんがね、先週話で泣いたんだよ。『でこのに残されて、孤独したらどうしよう』って。あんなに気丈だった母さんが、震えながら俺に縋ったんだ。息子として、見捨てるわけにいかないだろ? 咲良だって、自分の親が困ってたら助けるだろ?」
「親が困っているなら、話しって、お互いの予算の範囲で援助を考えるのが筋よ。私の座のおを勝に盗んでいい理由にはならない!」
「盗んだって言うなよ!」 悠馬の顔から笑顔が完全に消えた。 「母さんの座を経由して、務の付にそのままスライドさせただけだ。
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領収だって母さんが保管してる。盗むわけないだろ、俺の母親だぞ? 咲良、結婚からそんなに母さんを疑うなんて、としてどうかとうよ」
たい刃物が、胸の真んをざっくりと切り裂いたような覚だった。 彼は本気で言っているのだ。 の財産を無断で流用したことへの罪悪など切なく、母親をさせた自分に酔い、抗議する私を「酷な女」として断罪している。
「……」 私は爪がのひらにい込むほど拳を握りしめ、絞りすように言った。 「、お義母さんのにくわ」
「え? 挨拶に? うん、母さんもぶよ。ちょうど務からもらったプラン図があるから、咲良にも見せたいって言ってたし」
「違う」 私は悠馬の目をまっすぐに見据えた。 「リフォームの契約をに戻してもらうの。付を取り消して、私の百万を座に戻してもらう。世帯同居なんて、私は絶対にしない」
悠馬は呆れたようにきなため息をつき、首を横に振った。 「頑固だなあ……。まあいいよ。母さんに会えば、咲良も考えが変わるさ。母さんがどれだけ咲良のことを歓迎してくれてるか、話せばわかるよ」
その夜、悠馬はベッドに入るとすぐに規則正しい寝息をて始めた。 隣で横たわる私の体は、氷のようにえ切っていた。 何かが決定に狂い始めている。
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けれど私はまだ、このときの事態を甘く見ていた。 「悠馬は親いが過ぎて、銭覚と優先順位をし見失っているだけだ」と。 義母に会って、筋をてて説すれば、法な観点からも契約の無理がわかり、おは戻ってくるはずだと――そう信じようとしていたのだ。
翌の曜、武スカイツリーラインに揺られ、私たちは埼玉県越にある佐伯の実へと向かった。
駅から徒歩分ほどの宅に建つ佐伯邸は、築を超える造階建てだった。 庭の々は入れがき届いているが、どことなく閉鎖で、周囲の々を威嚇するようないブロック塀に囲まれている。
「母さん、入るよー」 悠馬が慣れたつきで鍵をけ、玄関にを踏み入れる。 「あら、悠馬! かったじゃないの」
廊の奥から現れた佐伯登紀子は、品な淡い藤のカーディガンを羽織り、ふわりと髪をセットしていた。 とても「孤独に怯えて震えている」ようには見えない、血のいい、艶やかな笑みを浮かべている。
「咲良さんも、いらっしゃい。狭いだけどがってちょうだい」 「……お邪魔いたします」
リビングに通されると、テーブルのにはすでに分い宅メーカーのカタログと、判の図面が誇らしげに広げられていた。 壁にはにくなったという義父の遺が飾られ、部全体に沈の匂いが微かに漂っている。
「母さん、付の件、咲良に話したよ」 悠馬がソファにく腰掛けながら、気楽にを切った。