"頭金300万を1万円にした婚約者の末路" 第1話
「残……万千百円?」
スマートフォンの画面をタップする指先が、微かに凍りついた。 何度見直しても、表示された数字は変わらない。 更ボタンを押す。読み込みのサークルが周し、再び酷な事実を突きつけてきた。
12,400円。
そこにあるはずだったのは、百万円だ。 来の、が入籍したに契約する予定だった、荻窪の古マンション。そのとして、で貯めてきた共通座だった。 そのうちの百万円は、私が卒から、毎しずつ定期預から切り崩して移した、私自の血と汗が滲む独代の貯だ。悠馬がしたのは残りの百万円に過ぎない。
画面の入細をく。 昨付で、見覚えのない名義への全額記録が刻まれていた。
『振込 サエキ トキコ 3,000,000円』
臓が、嫌な音をてて鐘を打った。 佐伯登紀子。悠馬の母親の名だ。
玄関のドアがガチャリと音をてていたのは、その数分のことだった。 「ただいまー。咲良、まだ起きてた? 今さ、駅のスーパーで桃がかったから買ってきたよ。やしてべようか」
靴を脱ぎ、当たりのいい柔らかな笑みを浮かべてリビングに入ってきた佐伯悠馬は、いつもの彼だった。 シワのないシャツ、穏やかにがった眉尻、争いごとを嫌う温な佇まい。 付きってきて、鳴り声ひとつ聞いたことがない。
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私が仕事でトラブルを抱えた夜には、黙ってココアを淹れてくれるような男だった。
だが、私の元にある画面の現実は、その温さの裏側に潜む別の顔を指し示していた。
「悠馬」 私はく、掠れた声で呼んだ。 「ん? どうしたの、そんな真剣な顔して」 悠馬は蔵庫をけながら、無防備に振り返る。
「結婚資の座、確認した?」 その瞬、悠馬のがピタリと止まった。 ほんのコンマ数秒、彼の背が直し、それから何事もなかったかのように蔵庫のドアを閉めた。には麦茶のポットが握られている。
「あ……見たんだ。いね」 悠馬はグラスに麦茶を注ぎながら、まるで「牛乳を買ってきたよ」とでも言うような軽やかさでをいた。 「言おうとってたんだよ。ちょうど今、母さんの方で続きが段落したって連絡があったからさ」
「続きって、何?」 「実のリフォームだよ。ほら、にもチラッと言ったじゃない? 母さん、父さんがくなってからあの広い越のにでんでるだろ。夜になると物音が怖くて眠れないとか、腰が痛むのに階段がきついとか、ずっと参ってたんだ」
悠馬はリビングのソファに腰をろし、堵したように息をついた。 その表には、ろめたさなど微もなかった。あるのは、良いことをした息子の達成だけだ。
「だからさ、ちょうどいい会だとって。
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俺たちが荻で狭いマンションを千万も千万もローン組んで買うより、実を世帯宅にフルリノベーションした方がずっとがりだし、理だろ? 母さんも『悠馬と咲良さんが来てくれるならだわ』って、泣いてんでくれてさ」
喉の奥がカラカラに乾き、息が吸い込めなくなった。 部の空気が、瞬にして苦しいのように私の肺にへばりつく。
「ちょっと待って」 私は震える声を抑え込みながら、テーブルのにスマホを置いた。 「実をリフォームするって……誰が世帯にむって決めたの? 私は度もそんな話に同してない」
「え? 同って……咲良、族になるんだよ?」 悠馬は議そうに首を傾げた。 「どのみち結婚したら、いずれは親の面倒を見る話になるだろ? だったら最初から同居した方が賃も浮くし、将来子供ができたときだって母さんに面倒を見てもらえる。咲良にとっても悪い話じゃないじゃないか」
「悪い話じゃない?」 私の声が、わず裏返った。 「あの座の百万円のうち、百万円は私の独代のおよ。私が汗垂らして貯めた、私のおよ!? なんで私の許も取らずに、全額お義母さんの座に振り込んでるの!?」
悠馬の眉が、わずかに寄った。 彼がを示すときの、いつもの癖だ。彼はきな声で鳴ったりはしない。
その代わり、相が「狭量でわからず」