"夜逃げ社長に捨てられた4人" 第1話
沢、38歳。を卒業してから20く、の板と塗料の匂いに囲まれてきてきた。舗の軒先に掲げる彫り板から、商の案内板、イベント会の横断幕まで、図面を見ればので完成形が浮かび、材へ触れればどこから削ればいいかが勝にく。それがにとって唯、自信を持ってに言えるものだった。
が勤めていた「黒田芸」は、方都のれにある社員4だけのさな板だった。社の黒田剛は営業力だけはあったが、社員をではなく使い捨ての具のように扱う男で、朝7にへ入って付が変わるまで作業するも珍しくなかった。残業代について尋ねれば、「うちはそういう細かいことを言う会社じゃない」と笑ってごまかされ、休勤を断れば翌週から骨に仕事をされた。
それでも4が辞めなかったのは、方では板業の求自体がなかったからだ。29歳の堂本真希は営業と企画を担当し、黒田に対しても「その指示、あります?」と平気で言えるほど気がかった。25歳の藤川奈は事務と経理を受け持ち、どれほどい空気でも言で周囲を笑わせるムードメーカーだった。
最は23歳の青葉凛だった。デザイン専学を卒業して黒田芸へ入ったばかりで、物静かだが仕事は丁寧だった。
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入社した頃、「自分の作った板で、この町をしるくしたいんです」と話していた凛の顔を見て、は20の自分をいすことがあった。
異変が起きたのは、料が3か連続で遅れていたある曜の朝だった。がいつものようにのシャッターをげると、は自然なほど片づいていた。黒田の机から類が消え、棚に並んでいた顧客ファイルもなくなり、事務所の庫は扉をけたまま空になっていた。
「……まさか」
真希が青ざめながら事務所へ入り、黒田へ話をかけた。しかし呼びし音さえ鳴らず、「現使われておりません」という音声が流れた。会社名義の座もほぼ空で、取引先から預かっていたはずのまで部消えていることを、経理を担当していた奈が確認した。
黒田は夜逃げしていた。
残されたのは、3か分の未払い料と期にわたる残業代、それから支払い期限の迫った請求だった。4は労働基準監督署や相談窓にもを運んだが、黒田本の所が分からず、会社に残っている資産もほとんどないため、すぐにが戻ってくる見込みはなかった。
そして4には、待つ余裕がなかった。
真希はすでに気料を滞納しており、自宅の気を止められていた。奈には止の予告通が届き、冗談好きの彼女でさえ「今は本気で笑えないかもしれません」
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と力なく笑った。
凛はさらに刻だった。賃を3か滞納しており、末までに支払えなければ退してほしいとから最通告を受けていた。自も、いつか独したに1階をとして使えるよう、30ローンで買った築古の軒を抱えている。
仕事がない。もない。それでも請求だけは待ってくれない。
黒田が消えてから3、4は閉鎖されたのに集まった。設備の部には債権者の確認が入る予定で、今を最に自由に入りすることもできなくなる。
誰もをけないままっていると、凛が突然のへた。
「沢さん、お願いがあります」
普段、自分からへ何かを頼むことなどほとんどない凛だった。その声がさく震えているのを聞いて、は嫌な予を覚えた。
「今末で、部をなきゃいけないんです。次の仕事が決まるまでで構いません。納戸でも玄関でもいいので、どこか泊めていただけませんか」
くをげた凛のまで赤くなっていた。
23歳の女性が、職の38歳の男へ寝る所を頼む。それがどれほど勇気のいることか、にも分かった。
はしばらく凛を見つめたあと、線を真希と奈へ移した。真希は気の止まった部へ帰り、奈も数にはを止められる。誰として、の配をしているではなかった。
「凛だけじゃないだろ」