"地上二メートルから見上げる逆転の空" 第15話
説会が終し、各社の代表者が名刺交換のために方の演台へと列を作った。
卓郎もまた、胸の奥の衝を押し殺しながら列に並んだ。自分の番が回ってくると、卓郎は名刺入れから浦組の名刺を取りし、篠原のに差しした。
篠原はそれを受け取り、印刷された文字に目を落とした。
「……限会社浦組さん」
篠原のい唇の端が、嘲弄するようにわずかに歪んだ。
「ああ……に、この駅の第期事で事故をされた、あのさんですね。労働基準監督署の正勧告が入った……」
会議に残っていた社の担当者たちが、斉に怪訝な線をこちらへ向けた。
卓郎のの奥がカッとくなり、襟にじっとりと脂汗が滲む。
言い返すべき言葉はほどあった。あれは元請けの違法な抜きが原因だったと、調査結果を突きつけて鳴り散らしてやりたかった。
けれど、ここで声を荒らげれば、周囲のは「やはり浦組は問題のある会社だ」と記憶するだけだ。卓郎が歯をいしばって拳を固めていると、篠原のややかな線が、卓郎の背へとすっといた。
そして――篠原の表が、初めて見苦しく凍りついた。
「……お。こんなところで、何をしている?」
薫は逃げることも、線を逸らすこともなく、自らの名刺を両で差しした。
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「浦組の、望です。本はご説いただき、ありがとうございました」
篠原は受け取った名刺を指先で弾くように見ろし、それからさく、嘲笑を漏らした。
「呆れたな。ゼネコンの設計を辞めたが、よりによってこんな零細の現作業員か。ハーバードまでかせてもらっておいて、随分と派なキャリアの使いだな」
薫は何も言い返さず、ただ静かにを見据えていた。
卓郎がたまらず歩へようとした瞬、背から伸びてきた久保田のが、卓郎の腕をギリギリとい力で万力のように締めげた。
「……浦さん」
篠原は名刺を胸ポケットにしまい込みながら、淡なビジネスの調に戻った。
「見積は応拝見しますよ。ただ、当社の特許法を扱っていただく以、施品質と全管理には相応の基準を求めております。過にな事故を起こされた歴のある会社に、が社の板である法を任せられるかどうかは……正直に申しげて、極めて厳しいと言わざるを得ませんね」
「……あの事故の原因は、当の元請けによる全管理の備でした。公な事故調査報告でも、当社の過失割はゼロであると認定されています」
「ええ、業界の類はそうでしょうね。ですが――世はそこまで細かく読みませんよ。事故を起こしたという『社名』だけを記憶するんです」
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篠原はそう言い捨てると、類をまとめて鞄に押し込んだ。
「懐かしい顔も見られましたし、実に義な説会でしたよ。失礼」
現事務所のプレハブをると、真のアスファルトからちる烈な陽炎が、全靴のゴム底を通しての裏をじりじりと焼いた。
は駅の通りを、誰としてをかないまま歩いた。
交差点の角に差し掛かった、卓郎はわずを止めた。
かつて父が転落した雑居ビルは跡形もなく取り壊され、そこには遮るもののない、広で無質な更が広がっていた。
「……浦さん」
背から、薫の沈んだ声がかかった。
「私が浦組にいるせいで……今回の仕事を邪魔してしまいます」
「そんなことはありません。あなたのせいじゃない」
「あのは、そういうです。自分が優位につためなら、どんな卑劣な段でも使います」
薫はそう言って、アスファルトのでく腰を折った。
あの面接のに見せたのと同じ、直角の礼。けれど今度は、謝ではなく、胸を締め付けるようない謝罪の形をしていた。
事務所に戻ってからの、卓郎と薫、そして久保田は寝るも惜しんで見積の作成に没した。
提された施計画の束は、社の倍以のみになった。事故をした会社だとろ指を指されるなら、現の浦組の全基準が業界のどこよりも厳格であることを、ので証するしかなかったのだ。