"地上二メートルから見上げる逆転の空" 第13話
公正証で作ったはずの毎の養育費の支払いは、最初のすら度も振り込まれることはなかった。
「……元の会社の層部には、掛けわなかったんですか?」
卓郎が掠れた声で問うと、薫は首を横に振った。
「掛けいました。けれど……あのアイデアが私のものであることを客観に証できる証拠が、何つ残っていなかったんです。きのノートはあのに処分され、会社を退職していた私には当の社内実績もない。自宅で個に引いていた図面には、確定付を証する術がありませんでした。層部には、すでに篠原が『元妻が妄で騒ぎてている』と先回りして根回しを済ませていましたから」
薫はそこで、寂しげに微笑んだ。声のない、痛ましい笑い方だった。
「悔しくないと言えば、嘘になります。……でも、過をんでを向いているがあるなら、そのと体力を、この子とできていくための仕事を探す方に使いたかったんです」
同じ建設の世界できてきたとして、その屈辱がどれほどのものか、卓郎には痛いほど分かった。
職にとって、自ら血を吐くいでみした技術を盗まれることは、所で命綱を刃物で切られることと何ら変わりがない。卓郎の握りしめた拳のに、じっとりと脂汗が滲んでいた。
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やがて、卓郎は胸の奥でずっと燻っていた、もうつの疑問を静かににした。
「……望さん。その『平らに組んでから起こす』という仕組みは、いついついたものなんですか?」
「歳のです」
いがけない、あまりにも幼い齢だった。
「のものづくりセンターという施設に、通っていたんです。休みの自由研究の教で、折りたたむと平らになるの櫓を作りました。祖父の現を見ていて、狭い所でい材を振り回して組むのが番危ないのをっていましたから」
卓郎は、湯呑みに伸ばしかけていたをピタリと止めた。
「……望さん。そのセンターって、川沿いにあった、あの古い造の建物ですか? 玄関にきな杉の駄箱があって、裏に廃材置きがあった……」
薫がハッと顔をげた。
「浦さんも……?」
「学のからまで、ずっと通っていました。あそこは子供の利用料が無料だったから、放課は毎あそこにいたんです」
のの音が、急にのいたようにじられた。
薫は瞬きを忘れ、卓郎の顔をまじまじと見つめ、それから信じられないものを見るようにさく息を呑んだ。
「……あの、廃材と麻紐だけで、が乗っても壊れない頑丈なを作っていた男の子がいました。あのを作ったの……」
「俺です」
卓郎はさく笑った。
「履歴で『望』という名を見た、まさかとはったんです。
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けれど……あそこで櫓を作っていたあの子が、まさかになって、うちの面接に来てくれるとはいませんでした」
薫の細い指先が、閉じたノートの表ので、かすかに震えていた。
卓郎のの奥にも、以に嗅いだ懐かしい匂いが鮮に蘇ってきた。カンナ屑ののり、用ボンドの酸っぱい匂い、そしてに照らされた畳の匂い。
「あのセンターでは、に度、子供たちの作った作品を写真付きで載せた『館報』が配られていましたよね」
卓郎がいしながら呟いた。
「自分の作った作品が面に載るは、嬉しくて朝から落ち着かなかったものです。……望さん、あの、まだ持っていますか?」
薫は寂しげに首を横に振った。
「あのをる、荷物を減らすためにほとんどの私物を処分してしまったんです。先、センターのを通りかかりましたが、建物の老朽化で閉館したという張りがていました」
そう言って、薫はソファーで丸くなって眠る向の柔らかな髪を、おしそうにそっと撫でた。
そのつきがあまりにも優しく、そして切なく見えて、卓郎はわず線をした。
のは、まだ止みそうになかった。
梅がけ、照りつける差しがアスファルトを焼き始めたあるの朝。
事務所で郵便の束を仕分けていた久保田が、珍しく机を叩いてきな声をげた。
「社! 駅の再発、第期事の協力会社説会の案内だぞ! 次請けのの枠だ。