"汚れた手と呼んだ義母へ" 第3話
佐伯医療グループが運営し、崇が常務理事として陣指揮を執るこの施設は、入居が数千万円をらない、政財界の鎮や名士ばかりを集めた「セレブ向け特護施設」だった。佐伯が来期の株式と投資ファンドからの巨額資を狙うための、最の目玉事業である。
そのグランドメゾン京都の最階、最級VIPエリアの個で、の老が暴れていた。
「せ! ここからせ! ワシを殺す気か! 毒を盛る気だろう!」
凄まじい叫び声とともに、数百万はくだらないとされる欧製の級具が壁に叩きつけられ、激しい破砕音が響いた。
佐伯健郎、歳。
元・名国学の法学部教授であり、佐伯翔太の祖父にあたる物だった。
健郎は度の血管性認症とアルツハイマー病の斑状併を患っており、以は自宅で静かに暮らしていた。しかし、今週末にの医療コンソーシアムの幹部陣がグランドメゾン京都の察に訪れることになり、崇と雅代の独断で、急遽この級施設へ制入所させられたのだった。
「内に認症の徘徊老がいるなんてられたら、グループのブランドイメージに関わる。最級の施設でく保護しているという形にすれば、の投資へのアピールにもなる」
そんな崇の浅はかな虚栄が裏目にた。
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み慣れた自宅から突然見らぬ豪華な部へと連れてこられ、見らぬスタッフに囲まれた健郎は、極度のから刻なBPSD(認症に伴う・理症状)を発症。猛烈な狂躁状態に陥ってしまったのだ。
「うわあああ! 触るな! 殺される!」
健郎は瓶を投げつけ、制止に入った特命介護スタッフの顔面を殴りつけた。ガラスが々に砕け散り、スタッフの鳴が廊に響き渡る。
監モニターでその景を見ていた佐伯崇は、苦々しい顔で机を叩いた。
「ええい、なにをやっている! さっさと取り押さえて力な鎮静剤を打て! 精神科の医師は何をしているんだ!」
脇に控えていた施設の専任医師が、青ざめた顔でをげた。
「常務、これ以の鎮静剤のアンプル投与は危険です! すでに限ギリギリまで投与していますが、興奮状態がすぎて薬効を回っています。これ以増やせば、呼吸抑制や止を引き起こします!」
「だとしても、あの狂乱状態を放置できるか! 今週末にはファンドのCEOが察に来るんだぞ! 入居しているの鎮たちからも『夜に叫び声が聞こえて眠れない』『どういう管理をしているんだ』とクレームが殺到しているんだ!」
崇の声が響く、雅代が級ブランドのバッグを握りしめながら、震える声で割り込んだ。
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「あなた、どうにかしてくださいませ! もしこのことが週刊誌やネットに漏れたら、佐伯の名誉は丸つぶれですわ! 翔太の学病院での世だって響きます!」
「分かっている! だからこうして額な当をして、部の特別訪問介護チームを配しているんだろうが!」
「それが……常務」
施設が恐る恐る挙をした。
「先ほど、派遣を依頼していた民介護事業者のすべてから『辞退』の連絡が入りました。すでにスタッフ名が負傷しており、これ以の危険が伴う介入は契約範囲であると……どんなに額な報酬を提示しても、誰も首を縦に振りません」
「なんだと!? ならいくらでも払うと言え! 万でも百万でもせ!」
崇が鳴り散らしたが、施設はかぶりを振った。
「おの問題ではないようです。認症の度危介入は、専のノウハウと信頼関係の構築がなければ、力づくで抑え込むほど悪化します。に怪をさせれば事業者の責任問題になりますから……」
崇は絶望な表でを抱えた。察まであと。もしこのまま健郎が暴れ続け、警察や救急を呼ぶ事態にでもなれば、株式の話は吹きび、佐伯グループの株価は暴落する。何より「級介護」を謳う施設の面目が完全に潰れるのだ。
その、施設が元のタブレット端末を叩きながら、いしたように声をげた。
「……あ、ありました。常務、件だけ……政の臨データアーカイブに、これと同等以の度狂躁状態を、体拘束も過剰投薬も使わずに鎮静化させた危介入の成功実績が記録されています」