"27年後、娘は父の葬儀に帰ってきた" 第10話
「仕事は忙しい?」
「夜勤が続くときつい。でも、利用者さんと話すのは嫌いじゃない」
「1で暮らしているの?」
「今はね。猫を飼おうか迷ってる」
会話は、くれていた母娘の再会らしくなかった。な言葉も、抱擁もなかった。
ただ、佐子がらなかった現の美穂が、しずつ目のに現れていった。
「あなたは?」
美穂が初めて質問した。
「今、何をして暮らしているの?」
「裁の仕事は減らしたけれど、所ののを直してる。あとは図館で週に2回、返却本を理してる」
「1で寂しくない?」
佐子はすぐに「寂しい」と答えなかった。それを言えば、娘へ自分の孤独を埋める役目を負わせる気がした。
「寂しいもある。でも、自分で暮らせている」
美穂はさく頷いた。
ケーキが運ばれてきた。美穂は苺を最まで残し、クリームをしずつべた。
「子どもの頃も、苺を最にべていた」
佐子が言うと、美穂はを止めた。
「覚えてるの?」
「毎、誕に同じものを頼んでいたから」
「理恵さんは、私が苺を嫌いだとってた」
「嫌いになったの?」
「違う。最にべるだけ」
2は初めて同に笑った。ほんのい笑いだったが、無理に作ったものではなかった。
べ終えたあと、美穂は鞄からさな形の髪留めをした。正の葬儀で遺のへ置いたものだった。
「これは、あなたが買ったの?」
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「10歳の誕にね。すぐなくしたとっていた」
「理恵さんがずっと持っていた。私が昔のをいすから、見せなかったみたい」
美穂は髪留めをテーブルのへ置いた。
「返した方がいい?」
「あなたのものだから、あなたが決めて」
美穂はし考え、再び鞄へ入れた。
「じゃあ、持っておく」
をると、のが駅を通り抜けた。27と同じだったが、当の文具ももなく、しいマンションが建っていた。
美穂は駅へ向かって歩き始め、佐子もしれてついていった。
交差点ので、美穂がち止まった。
「次は、群馬に来る?」
「ってもいいの?」
「理恵さんのを片づけたい。でも、1だと捨てられないものがくて」
「分かった」
「ただ、理恵さんの悪を言うために来るなら嫌」
佐子は頷いた。
「あなたがどんなふうに暮らしていたかを見るためにく」
美穂はしだけ表を緩めた。
横断歩の信号が青に変わった。2は並んで歩きしたが、をつなぐことはなかった。
27、美穂は母親が事故に遭ったという嘘を信じ、いへ乗った。佐子は夫の嘘を信じ、迎えにくはずの学からざけられた。
それからい、正と理恵は母娘のにち、それぞれが捨てられたとい込むよう言葉とを隠し続けた。
真相が分かったからといって、そのが消えるわけではない。
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美穂のには理恵を母親として慕った記憶があり、佐子のには正を疑い切れなかった悔が残っている。
それでも今は、誰も2の代わりに会うかどうかを決められない。
駅の改札で、美穂は振り返った。
「来の予定が分かったら連絡する」
「待ってる」
佐子が答えると、美穂はし迷ってから言った。
「じゃあ、またね。お母さん」
すぐに混みのへ歩いていったため、佐子は返事をすることができなかった。
ただ、そのにち尽くし、娘の背が見えなくなるまで見送った。
27とは違う。
今度の美穂は、連れられたのではない。自分ので帰り、そして自分のでもう度会うと決めた。
佐子はそれを追いかけなかった。
次に会うを決める権利も、どのくらいの距で母娘になるかを決める権利も、美穂自にある。
27は、1では埋まらない。
だから2は、取り戻そうとするのをやめた。
これからしく積みねられるだけを、自分たちので選ぶことにした。