"消えた母と2800万円" 第1話
19981225、野県松代では、昼過ぎから細かながり始めていた。駅の古い商にはクリスマスの飾りががっていたが、通りはなく、夕方になると先のかりだけが濡れた歩に映っていた。
商の角にある信州みなみ信用庫松代支では、末の料を迎え、朝から客が途切れなかった。38歳の宮本佳代は、窓ではなく方の事務机に座り、古い預台帳と画面の記録を照していた。
佳代はその支で16働いていた。派さはなかったが、数字の違いに誰よりもく気づき、若い職員が処理を違えると、客にられないよう静かに修正する女性だった。
「宮本さん、今はく帰らないといけないんじゃないですか?」
輩の田俊介が声をかけると、佳代は腕計を見た。午6を過ぎていた。
「娘とケーキをべる約束をしてるの。でも、これだけ確認したら帰るわ」
佳代の娘・奈緒は12歳だった。終業式を終えたそのは、夕方まで友ので過ごすことになっていた。
佳代は朝のうちにクリームシチューを作り、蔵庫へさなケーキを入れていた。蔵庫の扉には、娘に宛てたを貼っていた。
《シチューはで温めてね。帰ったら緒にケーキをべよう》
佳代が確認していたのは、期取引のない休眠座だった。
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預者がくなっていたり、所になっていたりする座の部で、数から自然な入が繰り返されていた。
数千円しか残っていなかったはずの座へ、突然500万円が振り込まれる。その翌、同じ額が別の会社へ融資として送られ、数かには貸し倒れ処理されている。
使われている名義は毎回違った。しかし融資先のくは、元の片瀬建設と関係する会社だった。
佳代は3週、支の沢義へ報告していた。
「古い座番号が、融資の仮受け座として使われています。入力ミスとはえません」
沢は資料を度見ただけで、机の引きしへ入れた。
「末で忙しいに、余計なことを掘り返すな。昔のシステムから移したのずれだろう」
それでも佳代は調査をやめなかった。帳簿の数字だけでなく、原始伝票、融資申込、印鑑照票まで確認した。
いくつかの申込には、すでにくなった物の印鑑が押されていた。職員しからないはずの暗証番号が使われ、審査担当者の署名まで同じ圧で記入されていた。
そのの午7過ぎ、佳代は資料から戻ってきた。の現輸送箱を抱えていたが、に入っていたのは現ではなかった。
正融資に関係する原始伝票と、12の休眠座の写しだった。
田は、佳代が箱を元へ置き、公衆話から誰かへ連絡する姿を見ていた。
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「今夜、資料を持っていきます。私に何かあったら、娘へ連絡してください」
相が誰だったのか、田には分からなかった。
午817分、裏の防犯カメラに佳代の姿が映った。制のにを着ないまま、の箱を両で抱えている。
佳代は裏をる、度だけカメラの方を見た。その表は、何かを決したというより、背を警戒しているように見えた。
それが、佳代を捉えた最の映像となった。
午9、支の現を確認していた職員が、帳簿の残と実際の記録に2800万円の差があると報告した。支の沢は、佳代が保管庫用の箱を持ちしたことをると、すぐに警察へ連絡した。
方、友宅から戻った奈緒は、台所で1、母の帰りを待っていた。鍋をにかけると、母が朝のうちに切っておいた参とじゃがいもが、いシチューのから現れた。
午10を過ぎても佳代は帰らなかった。話にもず、信用庫へ連絡すると、すでに警察が来ていると言われた。
夫の俊が帰宅したのは午11くだった。酒と煙の臭いをさせながら居へ入り、蔵庫に貼られたを無言で剥がした。
「お母さんは?」
奈緒が尋ねると、俊はを握りつぶした。
「もう帰ってこないかもしれない」
「どうして?」
俊は娘の顔を見なかった。
「最、誰もらない町へきたいと言っていた。
あいつは最初から、俺たちを捨てるつもりだったんだ」