みかん小説
本棚

"3人の息子は、夫の隠し子だった" 第14話

になった。入学式の朝、真しいランドセルを背負った娘は、玄関の鏡ので何度も横を向いた。

「似う?」

「とても似う。きいけどね」

「すぐきくなるもん」

笑うと頬にさなえくぼができる。その笑顔を見るたび、あの豪邸の隅で声を殺していた子と同じだとは信じられなくなる。

へ向かう途がふと尋ねた。

「ママ。族って、血がつながっているのこと?」

私はを止めた。し先で桜のびらがっていた。

「血がつながっている族もいる。でも、それだけじゃないとう。困ったときに守ろうとする、嬉しいときに緒に笑える、嫌なことを嫌だと言ってもれていかない。そういうたちも族になれるんじゃないかな」

「じゃあ蒼太くんと陽斗くんは、蓮くんと族?」

「3がそうなりたいとって、お互いを切にできるならね」

は納得したようにうなずいた。蒼太とは支援者を通じてに数回を交換している。陽斗は折りを同封し、蓮は度だけ、何もいていないい便箋を送ってきた。言葉にできない気持ちそのものが入っているようで、私はその便箋も切に保管した。

郎からは、収容先を通じて謝罪のが届いた。自分は族を守ろうとして方法を違えた、にもう度やり直したいとかれていた。

広告

私は返事をしなかった。彼が守ろうとしたのは族ではなく、斎藤という板と自分の支配だった。言葉で反省を語ることと、責任を引き受けることは違う。今が成して会いたいと望むが来れば、専と相談して考える。それまでは私が娘の全を守る。

入学式を終えた夜、私たちはさなケーキを2つ買った。は苺を最まで残し、半分に切って私の皿へ置いた。

「ママにもあげる」

かつては、目ので何度もべ物を奪われた。それでも今は、自分のものを奪われる恐怖ではなく、好きなと分けびをっている。

「ありがとう。でもべてもいいのよ」

緒にべた方がおいしいから」

私は苺をに入れた。甘酸っぱいが広がり、目の奥がくなった。

は入学祝いにもらったさな鍵付き箱を持ってきた。には、保育園で集めたの実、蒼太からの、私の絵本の帯、そして斎藤に着ていたセーターのボタンが入っていた。

「どうしてボタンを取ってあるの?」

「忘れないため。でも、怖いことを忘れないためじゃないよ。ママが迎えに来てくれたことを忘れないため」

私は返す言葉を失った。自分は娘を守るのが遅すぎたとい続けていた。けれどの記憶のでは、私は最に迎えに来たでもあった。

広告

「ママもつ入れていい?」

私は画材箱から、結婚に使っていたい鉛を取りした。を捨てたとっていた5も、鉛は箱の底で残っていた。それは、もう度始められることを教えてくれた証だった。

は箱へ鉛を入れ、鍵を閉めた。

「これはしい箱じゃないね」

「うん。私たちが取り戻したものを入れる箱ね」

その週末、次の絵本の絵を描いていると、が隣へ子を運んできた。しい物語は、4羽の鳥が別々の巣からち、それぞれの空を見つける話だった。

「この鳥たち、最はどうなるの」

「まだ決めてないの」

「みんな幸せになる?」

私は鉛を止め、を見つめた。幸せにはつの形しかないとっていた期がある。派な、成功した夫、男の子の跡取り、周囲から羨まれる暮らし。けれど、その完璧な形ので、私とは息をすることさえできなかった。

「同じ所にいなくても、みんなが自分の空をべたら、それは幸せだとう」

「じゃあ、そう描こうよ」

は青いを取り、きな空を描き始めた。線はからはみし、で形が違っていた。それでも迷いがなく、見ているだけで胸がるくなった。

婚が成した、総郎は私に3の息子から1を選べと言った。あのとき私は、隠し子など1もいらないと答えた。

その言葉に悔はない。ただ今なら、し違う言い方もできる。

子供は誰かが選び、所するものではない。

血統を証する札でも、会社を継ぐ具でも、傷ついたを埋めるでもない。どの子にも、自分のを選ぶ権利がある。

そして私にも、自分と娘を守るを選ぶ権利があった。

「ママ、空はもっと広い方がいいよ」

「そうね。をもう1枚つなげようか」

私たちはテープで画用をつなぎ、そのに続きを描いた。窓から入るがカーテンを揺らし、机のをふわりと持ちげた。

が笑った。私も笑った。

豪邸も、名の名字も、誰かに見せるための幸福も、もう必なかった。目のには、娘と描く終わりのない空がある。

それが、私がようやくに入れた本当の族であり、本当のだった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: