"「ただの用務員でしょ?」卒業式で笑われた72歳――アルバムを開いた生徒たちが泣き、校長は壇上を降りた" 第13話
、ので
正の鍵を握ったまま、佐藤は用務員をた。
廊の先には、が待っていた。
「その鍵だけは、私が預かります」
佐藤が議そうに差しすと、は返却箱ではなく、自分の掌で受け取った。
「今の会議で、朝の登支援制度を設する方針が決まりました。正式な承認には、まだ続きが必です」
「それなら、若いを入れたほうがいいでしょう。私は今で72歳です」
「毎働いていただくつもりはありません。しい担当者が、徒との距の取り方をにつけるまで、週に2回だけ協力していただけませんか」
佐藤はすぐには答えなかった。
30続けた仕事を、拍されたからという理由で放せなくなるのは違うとった。体力も以とは違う。設備の修理やのの作業を、これまでと同じように続けることはできない。
だが、が求めているのは過の再現ではなかった。
「佐藤さんの代わりを作りたいのではありません。あなたが1で担ってきたことを、複数の職員へ渡す伝いをしてほしいのです」
佐藤は窓のを見た。夕暮れの正を、卒業たちが写真を撮りながらていく。朝には着慣れない制で入ってきた180が、今はそれぞれ違う方向へ歩いていた。
「続きが通ってから、改めて話を聞かせてください」
広告
それが、そのにした唯の返事だった。
自宅へ戻った佐藤は、夜遅くまで卒業から贈られたアルバムをけなかった。卓の端に置き、夕を済ませ、呂に入り、いつもの刻にの作業着を用しかけてを止めた。
もう、毎朝着る必はない。
その事実を受け入れてから、ようやく表をいた。
最初のページには、青蓮の字で「名を呼んでくれて、ありがとうございました」とある。次のページには岸真帆がの絵を添え、その隣には美羽が「急がずにを越えることを教えてくれた」といていた。
180分を読み終えた頃には、窓のがくるくなっていた。
3週、学法は制度を正式に承認した。佐藤は週2回、午7から9まで勤務する登支援協力員となった。しい用務員や警備員、当番教員と緒に周辺を見守り、異変をじたには養護教諭や奈緒へ引き継ぐ。
正の鍵も、しい管理番号の札をつけて改めて渡された。
佳代はPTA会として、保護者向け文の冒に「子供の変化に気づけなかった保護者を責める制度ではありません」と加えた。美羽とは、すぐに何でも話せる母娘になったわけではない。それでも、娘が「今は答えたくない」と言った、理由を決めつけず待てるようになった。
そして学期。
桜のびらが残る正で、佐藤は任の用務員と落ち葉を集めていた。
紺の作業着ではなく、胸に「登支援」とかれたさな名札をつけている。
午736分、1の入がのでを止めた。
きめの制に、まだい革靴。背負った鞄の肩ひもを何度も握り直し、入っていく徒たちを見送っている。
佐藤はすぐにづかなかった。任の用務員へ目配せし、しれた所をゆっくり掃き始めた。
5分、入がさな声で尋ねた。
「ここにいても、られませんか」
佐藤はほうきを壁へてかけた。
30も、卒業式のも、何度もそうしてきたように、相の正面を避け、逃げを残した位置につ。
「おはよう。急がなくていい。は、まだ閉まらないから」