"7年間介護した私を捨てた夫――愛人を連れて帰宅すると、寝たきりの母も介護ベッドも消えていた" 第17話
午740分
それから6かの曜、由美はカーテンの隙から差し込む朝ので目を覚ました。
部がるい。そういながら枕元の計を見ると、午740分だった。休なので目覚ましはかけていない。それでも、こんなまで眠ったことは、の介護が始まってから度もなかった。
由美は布団のでゆっくり昨夜をたどった。
午11過ぎに本を閉じ、そのまま眠った。午213分にも、3の咳にも、5のトイレにも起きていない。の声を聞いた気がして、暗へを伸ばすこともなかった。
朝まで眠っていた。
胸の奥から笑いがこみげた直、目に涙がにじんだ。何かに勝ったわけでも、誰かを言い負かしたわけでもない。ただ7、体に刻まれていた刻を晩忘れただけだった。それが由美には、婚届をしたよりも確かな自由にえた。
台所で湯を沸かし、トーストへしめにバターを塗った。窓のでは、所の子どもが自転の練習をしている。転びそうになるたび、父親らしい男性が荷台を支え、そのをしずつしていた。
由美はコーヒーをみながら、蔵庫に貼ったさな予定表を見た。翌には、佐子と1泊2の旅へかける。以なら、の薬、排泄、事、緊急連絡を考え、誘われても断っていただろう。今、予定表にあるのは列の刻と宿の名だけだった。
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午10を過ぎてから、由美はホームへ話をかけた。職員がへ受話器を渡してくれる。
『今はずいぶん声がるいわね』
「朝まで眠れたんです。起きたら740分でした」
話の向こうで、がさく息をのみ、それから笑った。
『よかった。本当によかった』
その声を聞いた瞬、由美の涙はまた頬を伝った。は況を話した。リハビリで座っていられるが20分延び、今度は庭へる練習をするという。入居費も通院費も、本のと預貯から予定どおり支払われていた。
約2200万円は、誰かへ残すために凍らせておく数字ではない。がして眠り、必な介助を受け、自分ので暮らすためのおになった。
健はに度、類と用品を届け、必な類にも自分で目を通すようになったという。過が消えたわけでも、7が返ってきたわけでもない。ただ、へ押しつけていた責任を、自分の名で引き受け始めていた。
『旅、楽しんでいらっしゃい』
「はい。お産を持って、また会いにきます」
話を切ったあと、由美は押し入れからさな紺の旅鞄をした。26の婚旅で使ったきな鞄ではない。これからの自分に必な物だけを入れるため、最初の与で買ったものだった。
窓をけると、乾いたがカーテンを揺らした。
由美は寝具を干し、洗濯を回した。今は誰かの指示でくではない。昼には駅ので靴を見て、午は旅先を調べるつもりだった。
スマートフォンには、健からの着信もメッセージもなかった。由美は静かな画面を伏せるのではなく、そのまま鞄の横へ置いた。
午213分は、もう由美を起こさなかった。
午740分から始まったは、すべて由美自のものだった。