"旅行代を全額68万円出したのに現地で「年寄りはすぐ疲れて足手まとい」と別行動された" 第9話
最の嘘を頼む息子
「族内で解決したと伝えるだけではりないでしょう」
私は直が差しした社用スマートフォンを押し戻した。
「会社が確認するのは、私が11回の宿泊を承認したかどうかです。あなたは、私に何と言ってほしいの?」
直は本の顔を見てから、声を落とした。
「で許したと答えてくれればいい。息子夫婦が使うことを母さんもっていた、それだけで済む。会社に損をさせるつもりはなかったんだ」
つまり、最にもう1つ、私へ嘘をつけと言っているのだ。
「286万円の費用を会社に負担させ、3件の苦を残したのに?」
「返せばいいんだろう。役員になれば、それくらいすぐ返せる」
「本当に正当な利用だとっていたなら、なぜ私が同したと入力したの?」
直は瞬だけを閉ざした。族だから許されると主張しながら、規則は許されないと最初からっていた。その矛盾を、本の沈黙が認めていた。
直の話は、いつもまだにしていない未来を当てにしていた。昇すれば、役員になれば、株を継げば。そのたびに現の責任だけがろへ送られていく。
美咲が子へ座り直し、スマートフォンを操作した。
「沖縄へったとき、私が本当に丈夫なのか聞いたわよね」
彼女がいたのは、3の夫婦のLINEだった。直から《母さんには承認をもらった》《創業の正式な招待枠だから問題ない》と送られている。
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京都でも軽井沢でも、似た説が繰り返されていた。
「あなたは私にも、お義母さんにも、会社にも違う話をしていたのね」
「美咲、今それをす必はない」
直が画面を隠そうとを伸ばすと、美咲は子ごとろへがった。
「私だけが従業員を困らせたことにするつもりでしょう。でも、あなたは毎回『もっと言っていい』と言った。役員の妻として扱わせろって」
美咲は本ので、過のやり取りをコンプライアンス担当へ提すると約束した。自分を守るためのではあったが、なくとも証拠を隠す側には回らなかった。
「夫婦のLINEまで会社に見せるのか」
「お義母さんに嘘を頼むが、私を守るとはえないもの」
直は黙り込み、握った拳を膝へ押しつけた。
私は本に、調査へ必な範囲で自分の利用履歴と承認記録を照してよいと伝えた。私がで息子を追い落としたのではなく、同じ規則と証拠で判断された結果を残すためだ。
その夜、私は予定どおりホテルに泊まった。直と美咲には別々に帰宅を勧め、美咲は最終の幹線へ、直は会社ので京へ戻った。68万円を払った旅の最の夜を、私は初めて1で過ごした。
夕は、昨夜3で座ったレストランではなく、窓際のさな席で取った。本は特別料理を用しようとしたが、私は通常の宿泊プランと同じ献を頼んだ。
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料理を急かす声も、次の予定を確認するスマートフォンの音もない。温かい椀物の蓋をけると、柚子のりが静かにった。
1でいることと、1にされることは同じではなかった。自分で選んだ静けさのでは、事のも、がりの々のも、きちんとじられる。私は旅を台無しにされたのではなく、誰とを過ごすかを選び直したのだとった。
窓辺に古いバッグを置き、のがったを見ていると、直からLINEが届いた。
《11回とも母さんが許したと言だけ言ってくれ。父さんの会社を継ぐ俺を、母さんが潰す必はないだろう》
私はその画面を保し、返信せずにスマートフォンを伏せた。
やがて、もう度画面をき、《私は承認していません。事実と違う説はできません》とだけ返した。既読はすぐについたが、そのは何も届かなかった。
息子が守りたいのは、最まで会社ではなく、“継ぐはずだった自分”だった。