"旅行代を全額68万円出したのに現地で「年寄りはすぐ疲れて足手まとい」と別行動された" 第5話
っていた息子
「旅代は、俺が払ったことにしていた」
直は観したように子へ座った。美咲の線を避け、濡れた袖についた滴を指で拭っている。
「会社から特別当がたと話した。母さんの名をす必はないとったんだ」
「必がない?」
美咲の声が鋭くなった。
「あなたが族旅をプレゼントしてくれたと言うから、友達にもそう話したのよ。部になって収入が増えた、次は役員候補だって。全部、あなたが言ったことでしょう」
美咲は直の腕に触れたが、彼がなだめるようにをねると、く振り払った。昨のチェックインで彼女が迷いなく予約確認を取りげたのも、支払いをした夫の妻として振るっていたからだろう。私はだった態度の裏に、息子が作った嘘の輪郭が見えてくるのをじた。
直は答えず、テーブルのの68万円の細を裏返した。その仕は、数字まで隠せば事実も見えなくなるとっているようだった。
私は細を元に戻した。
「会社で私のを言いふらさないでほしいとは頼みました。でも、私がしたおを自分の柄にしていいとは言っていません」
夫がくなったあと、直には自分の力で働いてほしかった。創業者の息子というだけで周囲がをげれば、本も会社もくなる。
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だから株主である私と親子だと必以に調せず、評価は仕事で得なさいと伝えた。
だが直は、その沈黙を都よく使っていた。会社では創業とのつながりを匂わせ、庭では私の支援を自分の収入に見せていたのだ。
「お義母さんだって、最初から教えてくれればよかったじゃないですか」
美咲が私へ向き直った。
「らなかったから、普通のお寄りだとって接しただけです」
「相が株主なら敬い、普通の老なら置いていってもいいの?」
美咲の頬が引きつった。
窓際の鏡には、古いバッグを抱えた私と、濡れた級コートを着た美咲が並んで映っていた。装も財産もらなければ、私は彼女にとって気を配る価値のない老だったのだ。けれど、支配がをげた途端、彼女の声は目に見えてさくなった。
「そういうでは……」
「では、どういうですか。昨は私のバッグを恥ずかしいと言い、今朝はまといになると言った。直が私を体調良だとホテルへ伝えたあと、あなたは『おだけしてくれればいい』といた」
保画面、利用細、変更履歴。3つを順番に指すと、美咲はもう冗談だったとは言わなかった。
直が割って入った。
「美咲も言いすぎたと分かっている。せっかくの旅なんだから、これ以きな話にしないでくれ。
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午から3で回ればいいだろう」
「昨夜、観を2に変更した点で、今こうなると分かっていたでしょう」
「美咲が、たまには夫婦2で過ごしたいと言ったんだ。母さんは箱根にも何度も来ているし、ホテルで休むくらい構わないとった」
「私に聞かずに?」
「1くらい、いいじゃないか。昨の夕にも緒にいたし、部だって別に取ってある。何もに置きりにしたわけじゃない」
直は、の効いたホテルに残したことを恩のように語った。私が楽しみにしていたも、自分でき先を選ぶ権利も、彼のでは部と事を与えれば埋めわせられるものらしい。
直は苛ったように髪をかきげた。子どものころ、都の悪いことを問われたときと同じ癖だった。
「母さんは昔からいだろう。こんなことでるじゃなかった。だから……母さんなら、しくらいしてくれるとったんだ」
その言葉を聞いた瞬、私ので、いつながっていた何かが静かに切れた。