"断っただけで「要注意世帯」" 第1話
「相沢さん、今朝も宅確認です。玄関をけていただけますか?」
曜の朝72分。インターホンから聞こえてきた女性の声で、相沢健司は目を覚ました。枕元のスマートフォンにを伸ばして刻を確かめると、隣の部では学5の娘・凛がまだ眠っている。
健司は40歳のシステムエンジニアで、平は朝がい。せめて休くらい娘をゆっくり寝かせてやりたいといながら、仕方なくインターホンの画面をつけた。
そこには、緑のバインダーを胸に抱えた63歳の女性がっていた。
同じマンションにむ柿本代。自治会だった。
「今は曜ですよね。何か急ぎですか?」
健司が尋ねると、代は当然のことを説するように答えた。
「急ぎじゃないからこそ確認しているんです。体調を崩してけなくなっている方がいないか、さなお子さんだけで留守番していないか、毎朝確認する決まりですから」
「でも、うちは丈夫です」
「顔を見せてもらうだけです。すぐ済みますよ」
その「すぐ済む」が、もう3週続いていた。
健司と凛が《グリーンコート町》へ引っ越してきたのは3週だった。築8、6階建て、48世帯が暮らす分譲マンションで、駅から徒歩15分ほどれている代わりに、学と公園がすぐくにある。
2に婚し、凛を引き取った健司にとって、子どもがでも通学しやすいことはきな条件だった。
広告
内もるく、価格も予算内で、内覧したにはようやく落ち着ける所を見つけたとった。
違を覚えたのは、入居初に自治会から渡された資料を読んだだった。
《毎朝7~8 宅確認》
《 宅予定表提》
《災害・急病対策のため、希望世帯は予備鍵を自治会防災ボックスへ保管》
面だけ見れば、「齢者や子育て世帯を域で見守る制度」にえた。健司も最初は、それほど悪いことではないと考えていた。
ところが、実際には「希望」という言葉はほとんどを持っていなかった。
入居翌の朝7過ぎ、代がチャイムを鳴らした。玄関をけるとバインダーの名簿へ丸をつけ、「からもこのです」と説された。
宅確認になかったの玄関脇には、さな青い磁が貼られた。2以を空けるは、発だけでなく、旅先や帰宅予定刻まで自治会へ提するよう求められた。
「何かあったのためですから」
そう言われると、引っ越してきたばかりの健司には断りづらかった。
だが、平だけでなく曜も曜も朝7に鳴るチャイムには、さすがに耐えられなくなった。
「柿本さん」
健司は玄関をけず、インターホン越しに言った。
「今から、うちは宅確認からしてください」
画面ので代の眉ががった。
広告
「どうしてですか?」
「毎朝確認される必をじないからです。僕も娘も健康ですし、何かあればこちらから連絡します」
「でも、何かあってからでは遅いんですよ」
代の調には悪がなかった。本当に自分たちを守ろうとしているのだということは、健司にも分かった。
それでも、善だから何をしてもいいわけではない。
「すみません。参加しません」
「相沢さん、このマンションでは皆さん協力されています」
「だから僕も協力しなければならない、ということですか?」
代はし黙った。
健司はその沈黙を答えだと受け取り、インターホンを切った。
30分ほどして凛が起きてきた。髪をぼさぼさにしたままリビングへ現れ、蔵庫から麦茶を取りす。
「また柿本さんだった?」
「うん。でも、もう朝の確認には来なくていいって言ったよ」
すると凛は、予以にほっとした顔をした。
「よかった」
「そんなに嫌だった?」
「昨、パジャマでたらね、『女の子なんだから、もうしちゃんとした格好でなさい』って言われた」
健司はを止めた。
「そんなことまで言われたのか?」
凛はさく頷いた。
「あと、このは『お父さんがお仕事でいないは誰といるの?』って聞かれた」
そこまで聞かれていたとはらなかった。
健司と元妻の真理が婚したのは2だった。どちらかに決定な裏切りがあったわけではなく、のすれ違いが積みなった結果だった。